みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『僕はかぐや姫 / 至高聖所』 松村 栄子

 

([ま]9-1)僕はかぐや姫/至高聖所 (ポプラ文庫)

([ま]9-1)僕はかぐや姫/至高聖所 (ポプラ文庫)

 

おすすめ ★★★★☆

【内容紹介】

進学校の女子高で、自らを「僕」と称する文芸部員たち。17歳の魂のゆらぎを鮮烈に描き出した著者のデビュー作「僕はかぐや姫」。無機質な新構想大学の寮で出会った少女たちの孤独な魂の邂逅を掬い上げた芥川賞受賞作「至高聖所」。語り継がれる傑作二編が、待望の復刊!

 

【感想】

「僕はかぐや姫」...伝統ある女子高に通う自らを「僕」と称する文芸部員・裕生。。「僕」は歳を聞かれるのが嬉しくないと4歳の時に気づく。17歳になればすべてがしっくりと馴染むだろうと美しくない時間を過ごしてきた。。高潔な17歳真っ只中。。足りないものばかりが多すぎる。。何が足りないのかわからないと鬱屈する日々。白雪姫やシンデレラよりも月に帰るかぐや姫に心打たれる。。「男」とか「女」とかの世界ではないどこかに帰りたい?17歳は悩み多き神秘なお年頃。。

文芸部の合宿の夜..友人から漂う「女」の匂いに触発された〈僕〉の防波堤が崩れたシーンが良かった。

「〈僕〉は〈わたし〉と小さく呟く。〈あたし〉にならないように唇を触れ合わせて〈わたし〉と。それはなんだか透明に思えた。〈僕〉よりはずっと澄んだ、硬質な響きに思えた。」

抗えない性の成長にドキッとする。。女の性の意識を頑なに閉ざし〈僕〉の世界だけを守り続けた少女が手に入れた〈わたし〉に戸惑い、〈僕〉への喪失感を噛みしめ、〈わたし〉を受け入れ、肉体と精神の成長をする瞬間の細やな表現にドキッとする。。〈あたし〉にならないようにが、いい。

「至高聖所(アバトーン)」(芥川賞作品)...無機質な大学寮(とても魅力的な雰囲気のある大学。素敵✨行ってみたい)で生活する少女たち。鉱石研究会で鉱物に魅了される女子大生の家族(特に大好きな美しい姉)に対する複雑な疎外感や孤独が描かれている。。

どちらの話からも少女と大人の境界線でゆらぎながら、自覚のない焦燥感に知らぬ間に飲み込まれ、もがき、大人の階段に一歩足を進めるような...思春期特有の繊細で危険で透明感のある少女性の感覚に懐かしさやヒリヒリ感がほんのり漂う。。わたしにもこんな時代があったのよね。透明感は全くないけど...今もまだややこしいところはある笑。女性は複雑。