みみの無趣味な故に・・・

読書、時々映画の感想を書いてます。

『罪の轍』奥田英朗

 

罪の轍

罪の轍

 

おすすめ ★★★★★

【内容紹介】
昭和三十八年。北海道礼文島で暮らす漁師手伝いの青年・宇野寛治は、窃盗事件の捜査から逃れるために身一つで翌年のオリンピック開催に沸く東京に向かう。。一方、警視庁捜査一課強行班係に所属する刑事・落合昌夫は、南千住で起きた強盗殺人事件の捜査中、子供たちから「莫迦」と呼ばれていた北国訛りの青年の噂を聞きつける。進まぬ捜査の中、男児の誘拐事件が発生。世の中を震撼させる事件はどう繋がっているのか?

【感想】
実在した誘拐事件を元に描かれた犯罪小説。ネットもなく、交通手段、回線機器、防犯カメラなど文明の発達が現在とは明らかに遅れている時代でひとりの人間を追跡する困難さ。地道な捜査。刑事の執念には圧倒させられる。

ややネタバレあります

 

北海道、東京、熱海と駆け回る刑事たちの交通手段もままならず、地元警察との連携を駆使しながら(しがらみが多くて大変)、容疑者確保。ここからの緊張感は何とも言えない。。事情聴取で躍起になる警察側も容疑者の曖昧な供述で子供の安否不明なまま無駄に時間が過ぎ、刑事の焦りや緊迫する空気が充満し、息苦しく胸締め付けられる思いになりました(暴力的な取調べ。この時代だから?もしや今も?)

容疑者の生い立ちや人物像がとても緻密に描かれて、幼い頃の虐待で脳機能障害となり、記憶障害を伴い、不都合なことになると乖離してしまう傾向に。(これが取調べを難航させる原因)。。犯罪への抵抗感や感情がほぼないが、自分に優しくしてくれる人への情が厚い。。同情する余地があっても場当たり的な犯行や短絡的思考には憤りを感じるし、幼い子供への犯罪は許されず哀しみしか残らない。

「何としても吉夫ちゃんを両親の許に戻さなくてはならない」という刑事たちの一心を胸にわたしも事件の行方を追いかけ息つく暇もなくページをめくる手が止まりませんでした。。完成度の高さに圧巻してます。。昭和の時代背景、空気感が漂う重厚な長編を堪能しました。