みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『箱庭図書館』 乙一

 

箱庭図書館 (集英社文庫)

箱庭図書館 (集英社文庫)

 

おすすめ ★★★★☆

 

【感想】

「物語を紡ぐ町」がキャッチコピーの文善寺町で起こる不思議な物語。連作短編集です。

 

「小説家のつくり方」山里少年が小説家になった理由(切ない)
「コンビニ日和」コンビニ強盗と奇妙な共同作業をする店員二人組。(オチが笑)
「青春絶縁体」暗くてイタい文芸部員男女の不器用なやりとり。(青春だなぁ)
「ワンダーランド」少年が鍵を拾った。鍵に合う鍵穴を見つけるために町を探索。。とある住宅で...。(これは怖い)
「王国の旗」真夜中に集まる子供たちの王国(子供の思想は侮れない。。王国の鍵はもしかしたら...?)

 

わたしが一番好きなお話はラストの「ホワイト・ステップ」
文善寺町に珍しく大雪が降ったお正月。特に予定もない28歳大学院生・近藤。。母に新年の挨拶メール。。父の寝顔写真添付の返事が来て「いらんわ!」ってひとり叫んだり、、リア充な正月を過ごす友達に妬いたり、、アパート前で男女の雪だるま(ダル吉ダル子)を作り、ダル子を取り合ったりと、どうしようもなく過ごしていたら、、後ろから...きゅっ...きゅっ...雪を踏む足音が聞こえる。。姿形は見えないけど足跡が現れる。雪面に文字を書いて会話。。パラレルワールドの人間との遭遇だった。。

足跡と雪面の言葉を辿る不思議なお話。。雪が起こした奇跡の出会いで、静かで優しい世界に引き込まれる二人。。ホロリとする場面と運命の出会いも。。乙一さんらしく、じんわりと温かい余韻を残す。。こういうの好き。

 

どの話にもちょこっと登場する山里少年の姉でもあり、異常な本好きでもある図書館司書の「山里潮音」。。彼女の話は特にないけど、とても気になる存在。彼女の話を読んでみたいなぁ。

この表紙の幾何学的なデザイン、とてもシンプルでスタイリッシュ。だけど「図」の奥行きが複雑な人の心みたい。乙一さんの人物像は屈折してるけど純粋。。だから惹かれちゃう。。

この小説は読者から募集した投稿作品から乙一さんがリメイクする企画だそうです。

元ネタ↓

箱庭図書館 乙一|集英社 WEB文芸 RENZABURO レンザブロー

乙一さん、すごいなぁ。。楽しかった〜😊📖🎶