みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『満願』米澤穂信

 

満願 (新潮文庫)

満願 (新潮文庫)

 

おすすめ ★★★★☆

【内容紹介】

「もういいんです」人を殺めた女は控訴を取り下げ、静かに刑に服したが…。鮮やかな幕切れに真の動機が浮上する表題作をはじめ、恋人との復縁を望む主人公が訪れる「死人宿」、美しき中学生姉妹による官能と戦慄の「柘榴」、ビジネスマンが最悪の状況に直面する息詰まる傑作「万灯」他、全六篇を収録。

【感想】
「夜警」交番長がかつての部下を追想する物語。警察官としての資質はないと思った部下が刃物で切りつけられ殉職し、世間では勇敢な行動と伝えられるが...。

(交番長の呟きがジワリとくる。。一話目からなかなかの重み)

 

「死人宿」失踪した恋人は人知れぬ温泉宿で働いていた。人が死ぬ宿と呼ばれる自殺の名所。。恋人から名前のない遺書の持ち主は誰か?調べて欲しいと頼まれる...。

(宿泊客が死にたがり?どうにもできない感が、、怖い)

 

「柘榴」美しい妻と働かない夫。母娘2人(美人姉妹)で健気に生活を続ける。妻が離婚を決意。親権を巡り離婚調停へ...。

(遺伝はすごいなぁ。。女の欲の執念は底知れないわ)

 

「万灯」冒頭から男が裁かれてる。バングラデシュで働くビジネスマン。天然ガス開発の為に訪れた小さな村でトラブル発生。ライバル会社の男と村の指導者を殺害する事に...。

(どんな裁きかと思ったら、、恐ろしい結末に。。やむを得ない殺害の代償は...コレラ拡大パニック。。壮大だわ)

 

「関守」桂谷峠で謎の連続事故死を都市伝説風に記事にする依頼を受けた記者。取材で訪れた小さなドライブイン。店主の老女から事故被害者の話を聞く...。

(一番怖かった。。老女の語り。。ジワリジワリと恐怖へ導かれる。。老女の話より危険と助言してくれた先輩の話を聞けばよかったのに笑)

 

「満願」弁護士が若き日に弁護したのは学生時代にお世話になった下宿先の女性。。夫の借金先の主人を殺害して罪に問われる。彼女の殺害は計画性があったのか...?

(しっかりした妻。できた妻。優しい妻。妻の人間性と殺害が絡み合い、とても奥深い物語だった。。満願成就。。人の願いは計り知れない)

 


とても読みやすく、面白かった。。

結末がどれも寂しい。。だけど、良質感を感じられる。。『儚い羊たちの祝宴』でも感じた冷たい恐怖。。米澤さん、好きかもと思ったら、数年前に読んだ『時の罠』のアンソロジーで一番面白かった作品が米澤さんの「下津山縁起」だった。相性がいいのが、この作品で色濃く判明。。