みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『あの日のあなた』遠田 潤子

 

あの日のあなた (ハルキ文庫 と 7-1)

あの日のあなた (ハルキ文庫 と 7-1)

 

おすすめ ★★★☆☆

 

【感想】

完璧な父親が、百合の花を買いに出かけて事故死した。大学生の息子・在(アル)は、父親の書斎(入室禁止の秘密基地)で明らかにされてく過去と父の本当の姿に...。

 

決してホラーではないのに、、ホラー小説を読んでる気分になり、後ろに誰か立ってるんじゃないかなぁ?ってソーっと振り返ってみるあのゾッとする感覚(背筋が凍ると言いたい笑)が、、起きました。。純愛?家族愛?のジャンルなんだと思います。。でも、すごく怖かった。。

 

ネタバレします。

完璧な父には、忘れられない女性がいた。。生涯一番愛した女性・翠。。その女性との間に生まれてくるはずだった赤ちゃん(「在」と命名予定)。。翠は不幸な事故で死亡する。。翠の死を死ぬまで悼み続けた父親。

決して家族には翠の存在を悟られぬように完璧に「良き夫、良き父」を演じ続けた父親が翠との思い出に浸る場所が、書斎だった。。翠の理想の家、家庭を作り上げていく父の想いが書斎にいっぱい詰まってる。。

 

恐怖の戦慄が走った。。自分の家に知らない亡霊が彷徨ってるようで。。父の翠への想いの強さを気づいていただろう在の母親。。文中では明らかにされていない母(既に他界)の気持ちですが、、想像すると、一番辛い。夫の後ろには見知らぬ女性がいる。。完璧に笑顔を向けてくれる夫の背後。。妻にも強い想いがなければ、心折れそう。。

喪失感を隠しながら、家族や世間の前で完璧の人間を演じる父。。父に憧れ続けた在にとって、自分は初代在の偽物なのか?と苦しみ、怒り、父の過去を貪るように調べる。。過去を知れば知るほど、悲しみが広がる。。人には誰にも知られたくない過去はいくつかある。。その事を墓場まで持っていくのが責任な気もするのだけど。。苦しみを勝手に押し付けていく人間の自己満足の世界に、、辟易、、ゾワゾワ...。

 

「完璧な父」。。「完璧」の裏側って怖いなぁ。。決してホラーではないのだけど、、ゾワゾワばかりして、、あまり入り込めなかったです。。見方をちゃんと変えれば、とても心打たれる純愛物語なのかもしれない。。わたしにとっては、、そこまで読み取る力が及びませんでした。。