みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『パフューム ある人殺しの物語』 パトリック・ジュースキント

 

ある人殺しの物語 香水 (文春文庫)

ある人殺しの物語 香水 (文春文庫)

 

おすすめ ★★★★★

【内容紹介】

18世紀のパリ。孤児のグルヌイユは生まれながらに図抜けた嗅覚を与えられていた。真の闇夜でさえ匂いで自在に歩める。異才はやがて香水調合師としてパリ中を陶然とさせる。さらなる芳香を求めた男は、ある日、処女の体臭に我を忘れる。この匂いをわがものに…欲望のほむらが燃えあがる。稀代の“匂いの魔術師”をめぐる大奇譚。

 

【感想】

なんて奇妙なお話なんだろう。。匂いが充満していて、ものすごくパワーを使った気がする。。それほどインパクトの強いお話でした。

十八世紀のフランス。天才肌のおぞましい男ジャン・バディスト・グルヌイユ。彼の物語です。。生まれつき体から全く匂いがしない。。乳母から悪魔の子と言われ、孤児院に送られる。慈しみ、やさしさ、愛情より生を選び取ったグルヌイユは不気味な存在を放つ。鋭い嗅覚の持ち主で全ての物が発する匂いを感じ取り、匂いにより記憶を刻みつける。のちに香水調合師となり、さらなる香りの追求に励んでいく。。
人間の臭気から逃れ、孤独な世界を探し求める旅をする。。山の洞穴で引きこもり生活を始め、匂いの記憶で妄想暮らし。。自家製の匂い王国で7年も過ごす。。世に出た姿は髪が膝頭まで伸び、細い髭がヘソまで垂れる。指先は鳥の爪のよう...((((;゚Д゚)))))))
人間の世界に戻り、香水作り再開。。なんと体臭を作り上げる。。体臭レシピに驚き。。体臭用の香水を全身にふりかける。。体臭をなびかせて街を歩く。。体臭を得た喜び。。「匂いを支配するものは、人の心を支配する。」と、自信に満ちた人生を歩んでいく。。その後、TPOに合わせた体臭用の香水を作り上げていく。。日常用の無個性型や同情憐憫用。。さらなる狂気の世界へ歩むグルヌイユはついに美しき究極の香りに出会い、魅了され、その香水を作るために...。

 

狂気と匂いが満ちた世界に驚きの連発でした。人間を含むあらやる物の描写を匂いで表現する力には脱帽しました。顔を背けたくなるような町の濃厚で強烈な悪臭から甘美な芳香まで本から匂いが立ち込めてくるようです。。その中で唯一匂いを持たない男が放つ異彩な不気味さ。。すごかった。。体臭への果てしない憧れと探究心。。最初から最後まで衝撃的でした。。たまに音楽、絵画、文化を体感する読書はあったけど、、こんなに香り立つ読書は初めて。。危険な香りと衝撃度で星五つです。。