みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『作家と一日』 吉田 修一

 

作家と一日 (集英社文庫)

作家と一日 (集英社文庫)

 

おすすめ ★★★★☆

【内容紹介】

やっぱり旅っていいもんだ。大切な“一日”がまた増える。
ポルトガルでパトカーに乗せられたりなぜか別府でタイ古式マッサージにハマったり……

ポルトガルのビーチでパトカーに乗せられ、新宿ゴールデン街でなぜかフィンランドのヘヴィメタバンドと意気投合し、仕事場では愛する猫に癒される──。それら全てが作家・吉田修一の一日。そして、『悪人』『怒り』などベストセラーを生み出し続ける彼の素顔なのだ。ANAグループ機内誌『翼の王国』の人気連載をまとめたエッセイ集第三弾。本書を手に取ったあなたは、きっと旅に出たくなる。


【感想】

取材のために行く旅行ではなく、、旅行に行くうちに小説の構想が出来上がる吉田さんの旅行記はご本人曰く、、「別に何も...」の旅。。特に予定を決めるわけでもなく、ぶらっと歩いて、街並みや風情を楽しんだり、一日中ホテルの部屋で、その国のテレビを観続けたり、、ご自分の意外な嗜好に気づいたり、、その瞬間に出会う人、風景を体全体で実感し、吸収して、吉田修一が彩られていき、感性豊かな「一日」を歩まれているのです。。こちらまでワクワクしてしまう。。各地の吉田修一おすすめツアーのおかげで、行きたい場所がたくさん増えました。。近場の「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」(真っ暗闇の世界を体感するツアー)から体験してみたい。。

旅行記だけではなく、日常や失敗談も面白い。。役者さんの声を日本酒に合うとか。。ご自分の声は日本酒には似合わないとか。。「代々木」を頭では「よよぎ」なのに、「だだぎ」の発音しそうになって焦ってたり。「代々木ゼミナール」を「だだぎゼミナール」と覚えてしまったからだそうです(わたしも勘違いしてる地名や読み方、たくさんありそう💦)

雪国で「音」のない世界を知ることなど、、吉田さんの感性の表現が素敵(たまにかっこつけすぎ?って時もあるけど)で、小説家の書くエッセイは惹きつけられるものがあります。

 

わたしの好きな『パレード』という小説に出てくる伊原直輝の人物像についても、何とも興味深い解説が。。「不器用な若者ではなく、器用な大人の恐ろしさ」。。八方塞がりな直輝。。読後の不気味さを思い出します。これは得した気分♪

 

「一日」というものが奇跡的で貴重であること。。吉田さんがとっても人間好きで幸せの拾い方が魅力的な人だなぁと、さらにファンになりました。。空の旅でこんな素敵なエッセイが読めるのですね。。📖🎶