みみの無趣味な故に・・・

読書、時々映画の感想を書いてます。

『天上の葦』 太田 愛

 

天上の葦 上

天上の葦 上

 
天上の葦 下

天上の葦 下

 

おすすめ ★★★★★

【内容紹介】

白昼、老人は渋谷の交差点で何もない空を指して絶命した。死の間際、老人はあの空に何を見ていたのか。突き止めれば一千万円の報酬を支払う。興信所を営む鑓水と修司のもとに不可解な依頼が舞い込む。老人が死んだ同じ日、一人の公安警察官が忽然と姿を消した。その捜索を極秘裏に命じられる刑事・相馬。廃屋に残された夥しい血痕、老人のポケットから見つかった大手テレビ局社長の名刺、遠い過去から届いた一枚の葉書、そして闇の中の孔雀。二つの事件がひとつに結ばれた先には、社会を一変させる犯罪が仕組まれていた。鑓水、修司、相馬の三人が最大の謎に挑む。


【感想】
『犯罪者』で手に汗握るスピード感とスリルを楽しみ、『幻夏』で冤罪で苦しめられた人々の悲しみの深さに切なさと重みを引きずり、ようやく読んだ『天上の葦』。。圧巻でした。

素晴らしかった。。その一言以上になんて言えばいいのかしら。。とにかく素晴らしかった。。やっぱり一言では収まらないので、、感想書きます。少しだけネタバレしちゃってます。

ある人物の正光と共に戦った頃の語りには、凄みを感じました。。今も胸に刻み込まれた恐怖と悲しみ。。残酷さを伝える側の苦しみ。。信念が崩壊していく瞬間。。忘れてはいけないあの日。。
ここまでスピード感のある展開だった物語が老人の語りで一気にスピードダウンをさせ、壮絶な戦争の大きな過ちをこれでもかと叩き込んでくる。。

今も昔も情報に踊らされる国民。。戦時中に奪われた発言の自由。。戦闘意欲を高める報道。。使命、信念だけでは生き抜けられない現実。。生きていても苦しい時代。。正光が指差した想いを忘れてはいけないと心の底から思えます。。今までにはない角度から描き切る戦争の恐怖。。悲しみに圧倒されながらも、、とても感動しました。

 

本作の主人公はいつも飄々として軽い雰囲気の鑓水。。鑓水が正光へこだわる理由は彼の知られざる過去にあり、より人間性に深みが増し、とても惹き込まれます。

 

3作を通して、太田さんは人間の描き方がとても丁寧だと思いました。おかげで鑓水、相馬、修司に寄り添いながら読めたと思います。。

 

「常に小さな火から始まるのです」

 

まさに太田さんの描くストーリーは小さな火から始まり、壮大な物語に。。面白かった。シリーズ内でベストだけど、1作目から読むことを強くオススメします。。本作は今年のマイベスト確定だと思います。