おすすめ ★★★☆☆
【感想】
「アカイツタ」
美大出身の臨時教員・萩原は美術準備室で卒業生のキャンバスを見つける。少女が描かれている絵に興味を持ち、調べると描いた生徒は既に亡くなっていた。。絵の行き場がなくなった時に現れたのがモデルの少女・小波(美大の頃の恩師の娘・さなみ)だった。。ここから話は急展開に。。萩原は謎めいた影のある小波に惹かれていく。。父親から歪んだ愛で育てられた小波を救いたい萩原...。
「イヌガン」
年上の恋人・澪と暮らす耀。澪の言動に不安を抱き、彼女を尾行をすると、自分の知らない澪がいた。。ここから...
異なる2つの話が絡まり繋がり、真実が浮かび上がる。。
どちらの話も仄暗くて陰鬱で破滅にじわじわ向かっていくようなねっとりした空気が漂ってる。千早さんの美しい文章に絵画の世界を感じさせられる。現実的ではないという感覚が強いかな。絵を巡る話でもあり、小波をサロメのような女性と描写し、サロメのお話が出て興味深かったです。
「イヌガン」の話の方が好きです。耀が母から聞かされる言い伝え(イヌガン=犬神)に出てくる女性と澪を重ね合わせていき、惹かれていく様がとても純粋で幻想的でいいなぁ。。と、思いました。
このイヌガンという言い伝えは実在していて、与那国島で伝わる悲しい物語。男よりも犬を愛した女性のお話。
簡単に説明すると...
男たちとオス犬一匹と女が乗った船が、嵐に遭い、無人島(与那国島)にたどり着き、なぜだか男が次々姿を消していき、犬と女だけが残る。そこに新たな男が現る。女は「ここには猛犬がいるので、見つかれば噛み殺されます。どうか早く島を出てください」と話すが、女の美貌に男は犬を殺して遺骸の場所は教えず、女と夫婦となり、7人の子を授かる。男は女に犬の遺骸の場所を教えると、女は姿を消す。。男は女を探す。。女は犬の遺骸の場所で骨を抱いて死んでいました。。(安心し切った男の悲しい末路ね)
この本の内容は言い伝えに集結してる気がする。。
愛の形。。わかっているつもりが、本当は何もわかりあえていないこと。。「救える」は錯覚で、奪っていること。。
親子の歪んだ愛はわたしは理解はできないけど、、不可解な事は世の中にはたくさんあるって事はわかります。