【内容紹介】
東西の壁が崩壊したベルリンで、日本の剣道の防具が発見された。「贈 ヒトラー閣下」と日本語で書かれ、日本からナチスドイツに贈られたも のだという。この意外な贈り物は、国家と戦争に翻弄されたひとりの男 の数奇な人生を物語っていた――。1938年、ベルリン駐在武官補佐官となった日独混血の青年、香田光彦がドイツで見たものとは、いったい何だったのか?
【内容紹介】
父の国であるドイツの現実に、次第に幻滅を覚えてゆく香田。ついに成 立した日独伊三国軍事同盟も、彼の思い描いた祖国の進路ではなかった。迫害に怯えるユダヤ人女性・ヒルデとの生活にささやかな幸福を見いだしたのも束の間、居合術をヒトラーの前で披露する機会を与えられたことをきっかけに、香田の運命は大きく狂いはじめた……。
おすすめ ★★★★☆
【感想】
東西の壁が崩壊したベルリンで日本からヒトラーに贈られた剣道の防具と日記が発見される。日記にはドイツ人の父、日本人の母を持つベルリン駐在武官補佐官・香田から見た変わりゆくドイツの姿が記されていた。
ゆるやかに動き出すドイツと日本の関係が、第二次世界大戦が始まり激変する。日独の快進撃が続き、ヨーロッパ諸国の制圧からドイツの破滅、日本の敗北まで事細かく描かれる。
ヒトラー率いるナチスドイツの洗脳政策が怖すぎる。。心酔していく人の高揚感、拒絶していく人の激しい心情。熱病に侵されていくような狂気と恐怖の世界。。ユダヤ人迫害。医療現場における影の現状。国民の本音。ユダヤ人の悲痛な叫び。緊迫感と絶望感で胸がしめつけられる。
香田が愛したユダヤ人女性・ヒルデとのささやかな幸せな暮らしや友人、家族との交流が唯一温かみを感じさせられる場面だけど、、愛する者を続々と奪われていく虚しさがどんよりさせる。。一人の誤った判断でもがき苦しむ人々。。年表でしか知らなかった歴史。。関わった人々の数だけ歴史があるのだと、深く思い知りました。。ずっと気が重かった。。気が重いのは、生々しい戦争、ユダヤ人に対する残酷性と悲惨な生活、ドイツ国民の苦悩、壮絶な光景が映像化しやすく、恐怖の連続。戦争の現実を最後まで容赦なく叩き込まれ、かなり辛いです。弱者に優しい社会であってほしいと心から願いたいです。。涙。