みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『不在』 彩瀬 まる

 

不在

不在

 

おすすめ ★★★★☆

 

【感想】

疎遠だった父の死。父の遺言は「明日香を除く親族は屋敷に立ち入らないこと」
明日香は25年ぶりに幼い頃に住んでいた洋館を訪れる。そこには自分の知らない父の痕跡が鏤められていた。
仕事仲間、恋人、親族、父と最後に暮らしていた女。。様々な人との関わりで愛の固定観念が崩壊して行く。。

遺品整理。。一度だけ体験したことがあります。。人に使われていた不要物に愛着や記憶がない分、、持ち主の思い入れがわからぬまま、価値をどこで見極めるのか、なかなか困難。。思い出のある場所だけど、なんとなく他人行儀で深く踏み入れられない。。故人を通して、自分の内面や家族の意外な一面など、表と裏が時折垣間見えてしまう。。遺品整理の間は立ち止まり、あらゆる葛藤の日々ではあるが、、終わると気持ちは前を向いてる。。不思議なひとときです。。

厳格な祖父と横暴な父を自分に重ね、順調と思っていた仕事(漫画家)や恋愛に躓き、苦悩する明日香。。幸せになる漫画を描くがうまくいかない。。恋愛も。。さみしいときほどハッピーエンドを求めるが、、終わるとさらにさみしくなる。。この虚しさやフッと力が抜ける感覚が彩瀬作品からはいつも感じられる。。疲れるのだけど、次も読みたくなる彩瀬さん。。これはこれで楽しいです。。