みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『西洋菓子店プティ・フール』 千早 茜

 

西洋菓子店プティ・フール

西洋菓子店プティ・フール

 

おすすめ ★★★☆☆

 

【感想】
頑固なシェフ・じいちゃんと孫娘のパティシエ・亜樹が営む下町洋菓子店。。甘いスイーツの香りが漂う店内に訪れる少しほろ苦い6つの連作短編集。

 

亜樹の洋菓子へのまっすぐな想いと頑なさに戸惑う婚約者(弱気な理解者)。。亜樹の姿勢に憧れる元職場の後輩(迷える子羊)。。その後輩に恋をするネイリスト(ミナがいちばん好き)。。近所に住む心に闇を持つ主婦(この話だけ、、異質。苦味が強め)。。亜樹を取り巻く人々の心の苦味をほんのり溶かす甘い洋菓子たち。


元職場の後輩・スミくんの物語。彼視点の女性2人の印象がスミくんの心をうまく表してる。。ネイリスト・ミナはお洒落大好きで可愛い今時のキラキラ女子。彼女の恋心を知りつつ、友達として側にいる。亜樹は化粧もせず、洋菓子の事で頭いっぱいのキリッと凛とした女性。しっかりした女性とふわふわした女子の間でケーキの修行に励む。。ふわふわ女子の印象を残したまま、、ミナの物語を読むと、印象がガラリと変わる。。ネイルにかけてのプロ意識。仕事への隠れた情熱をもち、とてもしっかりとして芯のある女性。スミくんの前では可愛いくて、ふんわりな女子になるのね。。切ない片思いが亜樹への好奇心に変わり、飾らない女性の自然美に心打たれる。亜樹とは世界が違うけど、仕事へのこだわりは共通する点がある。。大きな違いは、相手の心情に寄り添って、好きな人を見守る女性。。一方通行の恋だけど、前向きなミナがとても可愛らしい。。


ラストの頑なな孫娘の心を溶かすじいちゃん、ばあちゃんのお話が亜樹の明るい将来を思わせてくれて良かった。