みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『受精』 帚木 蓬生

 

受精 (角川文庫)

受精 (角川文庫)

 

おすすめ ★★★☆☆

恋人を交通事故で失った舞子。悲しみは癒される事もなく、かつて二人で訪れた山に登り、そこで出会う僧侶に「恋人は生きている。彼の子供は産みたくないか?」と。。ブラジルのサルヴァドールに旅立つ。最新医療の産婦人科。自然豊かな環境も文化も素晴らしい世界で、同じ境遇の女性たちと気持ちを分かち合い、受診を続ける。穏やかな時を過ごす中、妊婦の遺体を目撃する舞子。遺体は処理をされ、隠蔽されていく。。疑惑が心に広がる中、妊婦の飛び降り自殺が起きる。。彼女が残したメッセージ。。連続不審死に舞子の周囲が密かに調査を始める。。彼女の死が本当に自殺なのか?

 


とても興味深いテーマでありながら、とても読み進めるのに困難な話でした。。最愛の男性を不慮の事故で失ってしまった女性の、愛する人の子供が欲しい気持ちはとても共感を得ます。シングルマザーで育てていく覚悟を考えると、、その覚悟は計り知れないものである以上に、出産のリスクとケアも考えさせられる内容であります。。中盤から巻き起こる不審死へのミステリー要素と進展がとてもじれったく、、思いのほか、退屈さを感じ得る事になる。ブラジルという文化、貧富の差を感じさせない心豊かな生活、医療保険に関する厳しい現実は、とても興味深く、産婦人科の医学以上の大切な繊細な心理的問題をとても実感した内容ではある。ドイツの歴史的背景、ブラジルの移民問題、が本編のテーマと不審死への追求などへの遠回りにしている気になり、、つい、本を閉じてしまい、読み進めない原因に。ラストの衝撃的結末?が人の命の軽さに唖然としてしまい、、人の命の重さと軽さの天秤の秤がわたしに混乱をもたらせ、とても複雑な思いのまま、読了を迎えました。。