みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『吉祥寺の朝日奈くん』 中田 永一

 

 

吉祥寺の朝日奈くん (祥伝社文庫)

吉祥寺の朝日奈くん (祥伝社文庫)

 

 おすすめ ★★★☆☆

 

【収録作品 】
「交換日記始めました!」

恋人同士の圭太と遥が内緒で交わしていた交換日記。二人だけの秘密だったはずが…。

「ラクガキをめぐる冒険」

高校二年のときにクラスメイトだった遠山真之介。五年後の今、不思議なことに同級生の誰も彼のことを憶えていないのだ。

「三角形はこわさないでおく」

ツトムと小山内さんと、俺。ツトムは小山内さんが気になり、小山内さんは…? 微妙なバランスの三角関係の物語。
「うるさいおなか」

私のおなかは、とてもひんぱんに、鳴る。そのせいでどうしても積極的になれなかった私の前に、春日井君があらわれて…。

「吉祥寺の朝日奈くん」

山田真野。上から読んでも下から読んでも、ヤマダマヤ。吉祥寺に住んでいる僕と、山田さんの、永遠の愛を巡る物語。

 

【感想】

「交換日記はじめました!」(二番目のお気に入り)
交換日記を始めたカップルが破局を迎えるまでの交換日記。。そのノートがなぜか色々な人の手に渡り、それぞれが誰かに想いを書き込む。。巡り巡って、、持ち主へ。。ノートを手にした人に勇気を与えてくれる奇跡のノート。。本当の奇跡がこれから起きるかもしれないと思わせるラスト...。ノート一冊を巡り、顔の見えない人の文字と内容で想像を巡らせる世界。。接点のなかった人とので出会いは奇跡に近い。。SNSの感覚にも似てる。。今はすぐ繋がる時代。繋がらない時代の心弾ませる想い。。昔の恋愛王道なのかなぁ。。

「ラクガキをめぐる冒険」
八年ぶりに同級生の携帯にかけてみると、違う男性に変わっていた。。どうしても話したいことがある桜井千春は、、当時の同級生に手伝ってもらって、彼の居場所を突き止める。。八年前のラクガキを一緒にした友達。。その裏には意外な事実が...。

「三角形はこわさないでおく」
成績優秀、スポーツ万能、クールな美男子・ツトムと至って普通だけど、器用にこなす男子・廉太郎。。親友同士の2人が恋をしたのは同級生女子・小山内さん。廉太郎はツトムの恋の成就を願い、必死に忘れる事に努める。。小山内さんの気持ちは実は廉太郎にある。その2人の気持ちに気づいたツトムは...。
3人が互いを思いやる気持ちが、ほろ苦さまでもとても爽やか。。

「うるさいおなか」(一番お気に入り)
小さい頃からおなかが鳴ってしまい、いかに周りに音を聞かれないように常に気遣う高山さん(自称ハラナリスト)
「きゅるるる」だったり、「こぽこぽ」だったり、「ちゃぷちゃぷ」だったり、「ぴるぴるぴるぴるぴる」と天使がスティックをふりまわしてるかのような音だったり。。。
人より耳が良い春日井くんから「高山さんのおなかから聞こえる雑多な種類の音。。まるで楽器みたいだよね。人体はいつも音楽を演奏してるんだな」と突然告白され、、彼との闘いが始まる(高山さんだけの孤独な闘い)
コンプレックスというのは、自分が思ってるほど、人は気にしていないけど、、そう簡単に克服できない。。でも高山さんの奏でる音に惹かれる変態(高山さん命名)が彼女の孤独な闘いを終わらせてくれると思う。。高山さんが面白くて、、笑った。

「吉祥寺の朝日奈くん」
山田真野。。3歳女児を育てる人妻。。吉祥寺の喫茶店で彼女と強烈な出会いをする朝日奈くん。。たまに会うようになる二人はお互い心通わせる仲となり、、純愛と思われた二人の関係には裏がある...。

ろくでなし旦那の考えることがほんとにろくなしだけど、なかなか壮大なろくでなしだったので少し感心する。詐欺もそうだけど、ろくでなし事業って結構綿密な計画の中で繰り広げられているので、その労力の発揮どころを別の場所で使えばよいのでは?という考えはろくでなしではない人の考え方なのだと思う。