おすすめ ★★★☆☆
内容(「BOOK」データベースより)
『さくら』で彗星のように華やかなデビューを飾った西加奈子の第4作にあたる長編小説。冬の大阪ミナミの町を舞台にして、若々しく勢いのある文体で、人情の機微がていねいに描かれていく。天性の物語作者ならではの語り口に、最初から最後までグイグイと引き込まれるように読み進み、クライマックスでは深い感動が訪れる。このしょーもない世の中に、救いようのない人生に、ささやかだけど暖かい灯をともす絶望と再生の物語。この作品で第24回織田作之助賞を受賞している。
読みながら、声を出して笑ったのは久しぶり。惰性的に生きている二人の主人公。ただただ毎日をこなしていく自意識過剰?な中年男とニューヨークへ旅立った同棲男をひたすら待つ若い女の主観で物語が進んでいくのだけど、これはどういった種類のお話なんだろう?と不思議な気持ちと戸惑いが少し湧きあがった。特にドラマ的な事もなく、情緒的な事もなく、大阪ミナミという町に住んでる個性豊かな人々との温かい交流があるわけでもない。でも面白かった。二人の卑屈な物の捉え方がとても陰気ではあるが、面白い。感動的なラストのはずが、凄く笑った。大爆笑した。
なるほど、笑いと涙のお話だったのね。こういうのが許される町なんだろうな。通天閣が見下ろしている大阪の街って。