みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『medium霊媒探偵城塚翡翠』 相沢 沙呼

 

medium 霊媒探偵城塚翡翠

medium 霊媒探偵城塚翡翠

  • 作者:相沢 沙呼
  • 発売日: 2019/09/12
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

おすすめ ★★★★☆

【内容紹介】

推理作家として難事件を解決してきた香月史郎は、心に傷を負った女性、城塚翡翠と出逢う。彼女は霊媒であり、死者の言葉を伝えることができる。しかし、そこに証拠能力はなく、香月は霊視と論理の力を組み合わせながら、事件に立ち向かわなくてはならない。一方、巷では姿なき連続殺人鬼が人々を脅かしていた。一切の証拠を残さない殺人鬼を追い詰めることができるとすれば、それは翡翠の力のみ。だが、殺人鬼の魔手は密かに彼女へと迫っていた――。

【感想】

本屋大賞ノミネート作品10冊目を読み終えました。。楽しんだ〜🎶

死んだ人間を降ろす、死んだ人間の意識を身体に宿すことができる霊能者・翡翠の能力が凄い。霊視、死者の言葉を伝達、生者から放つ匂いを嗅ぎ取り素性を知る、生者と死者の媒介役...霊能力てんこ盛り。儚くて可憐で天然で誰もが惹きつけられる美貌の持ち主でもある。表紙の女性.....なんですよ(。-艸-。)

警察から捜査依頼を受けるミステリー作家・香月史郎。翡翠が事件後、瞬時に見分ける犯人像(時には犯人名指し)を元に論理を立て、証拠を掴み、難事件を解決していく。ひたすら証拠を探すミステリー笑。。連作短編集です。。3つ目の事件で解決のパターン化と香月先生と翡翠の距離が縮むほど(章を重ねるごとに)翡翠の魅力が失われていく事に少々飽き飽きしていたのですが、、難事件解決と同時に起きている巷を揺るがす連続猟奇殺人事件。シリアルキラーと翡翠の対峙がついに最終話で...緊張感溢れる場面なんだろうけど、すごく笑ったよ。「翡翠ちゃーん」と叫びたくなる(帯に最強、最驚、そして最叫と書いてあったなぁ笑)。。長めの伏線をスッキリ回収。。魅力が失われつつあった翡翠ちゃんが.....好きでたまらなくなったよ笑。。1度きりしか楽しめないけど、面白かった〜。

『店長がバカすぎて』 早見 和真

 

店長がバカすぎて

店長がバカすぎて

  • 作者:早見和真
  • 発売日: 2019/07/13
  • メディア: 単行本
 

おすすめ ★★☆☆☆

【内容紹介】

「幸せになりたいから働いているんだ」
谷原京子、28歳。独身。とにかく本が好き。
現在、〈武蔵野書店〉吉祥寺本店の契約社員。
山本猛(たける)という名前ばかり勇ましい、「非」敏腕店長の元、 文芸書の担当として、次から次へとトラブルに遭いながらも、 日々忙しく働いている。 あこがれの先輩書店員小柳真理さんの存在が心の支えだ。
そんなある日、小柳さんに、店を辞めることになったと言われ……。

【感想】

大爆笑!と帯に書かれていましたが、、わたしは苦笑いの連発でした。書店で働く谷原京子さん(従業員をフルネームで呼ぶ店長。。これは返事に躊躇するわ笑)は意味のない朝礼の長い挨拶や空気を全く読まない店長への不満が充満し、心の中で毒吐き、憤怒状態。。「辞める。マジ、辞めてやる!でも...」と葛藤する谷原さんの苦悩は大変そうではあるが、同情しにくいお人柄。。書店員、小説家、お客様の高圧的な言動や傲慢な人間性が酷すぎて、わたしも頭を抱えてしまう。。口の悪さが目立つ。。イヤミでも毒舌でも、もう少し品がほしい。。わたしもストレスが溜まっていく(←これが狙い?)。。出版業界のストレス発散本なのかもしれない。こちらは本屋大賞ノミネート作品です。。もし本屋大賞を取ったら、底知れぬ書店員のストレスに怯えちゃう。。ドタバタしていて、結局何が言いたかったのか意図がわからず...最後はわたし(読者)がバカすぎて?なのか?と思ってしまった。

『展望塔のラプンツェル』 宇佐美 まこと

 

展望塔のラプンツェル

展望塔のラプンツェル

 

おすすめ ★★★★★

【内容紹介】

労働者相手の娯楽の街として栄えた多摩川市は、貧困、暴力、行くつく先は家庭崩壊と、児童相談所は休む暇もない。この荒んだ地域に寄り添って暮らすカイとナギサは、街をふらつく幼児にハレと名付け面倒をみることにする。居場所のない子供たち。彼らの幸せはいったいどこにあるのだろうかーー。

【感想】

息苦しい。やるせない。受け止めきれない。自分の弱さを認識した。

貧困、暴力、育児放棄などによる家庭崩壊。。児童相談所、こども家庭支援センター、保育所、学校、警察の連携が「各家庭」の事情(親の理不尽さ、家庭内に踏み込めないこと)により、困難を窮する場面にもどかしさもあるが、救いたくても救えない状況に虚しさや疲労が募る職員の気持ちもひしひし伝わる。虐待を受けている子供が施設に保護されることは解決策として最も適していると思われるが...「正しいこと」が子供にとってベストとは限らない。

殴られても苦しくても「転んだ」と言い張る子供の訴え。親に愛されたいという遺伝子が生まれながらに組み込まれてる。。母子家庭の貧困により、子供と心中をする母娘。子を殺したい気持ちはないが、生きる判断力はなくなり、死だけの思考。。育児放棄により、衣食住を蔑ろにされ、人間的扱いを受けられない子供。。性的虐待を受ける少女の壮絶な自己防衛。。親も環境も選べない子供たちにとって「家族」は大切な存在でかけがえのないものなのだと身に染みる。。

「子供は死ぬために生まれてきたんじゃない」

「今日のあたしたちは明日はもういない。毎日毎日生まれ変われたら。」

この願望が胸に突き刺さる。。あたりまえな日常を過ごせるわたしは、いかに幸せだったのかを痛感する。。虐待を受けた子が連鎖を止め、衣食住に困らず、日々無事に生きる奇跡に涙が止まらなかった。。暴力が否応なく出る。乱暴な世界を受け止める事ができず、居た堪れなくなる。現実に虐待を受けてる子供たちの必死に立ち向かう小さな力を支える人達。。過酷だったが、希望がある話で良かったと心から思える。

『ハマスホイとデンマーク絵画』

ハマスホイとデンマーク絵画|東京都美術館

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東京都美術館(2020.2.28)

2月29日〜3月16日まで休館なので、展示会場に行ってきました。混雑はしないとは思っていたけど、想像以上に人がいなかった。そのおかけで北欧の静を存分に楽しめました。

 

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ピーザ・スィヴェリーン・クロイア

「スケーイン南海岸の夏の夕べ、アナ・アンガとマリーイ・クロイア」

海岸を楽しむ画家の妻たち。。愛妻家が多いわ〜

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クレステン・クプゲ

「海岸通りと入江の風景、静かな夏の午後」

クプゲはハマスホイが最も尊敬した画家。

 

デンマークの牧歌的な風景画が静謐で平和。柔らかくて温かい北欧の空気に包まれ、自然の音が聞こえてきそうなくらい吸い込まれる。

 

画家たちの妻の日常が描かれる作品が多くあり、何気ない朝食の風景。北欧雑貨が素朴だけどお洒落で可愛い💕幸せな時間が伝わる。。

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ピーザ・スィヴェリーン・クライア
「朝食、画家とその妻マリーイ、作家のオト・ベンソン」

 

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ラウリツ・アナスン・レング
「遅めの朝食、新聞を読む画家の妻」
北欧家具や洋服が可愛い💕

 

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ヴィルヘルム・ハマスホイ

「カード・テーブルと鉢植えのある室内、ブレズゲーゼ」

誰もいない静寂な部屋の中で鉢植えやライト、それぞれの感情が伝わってくるこの絵...好きです。

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「開いた扉、ストランゲーゼ30番地」

気になる開き方。ひとつひとつゆっくり閉じていきたい。。誰もいない感..いいなぁ。

 

ヴィルヘルム・ハマスホイの言葉

「私はかねてより古い部屋には、たとえそこに誰もいなかったとしても、独特な美しさがあると思ってます。あるいは、まさに誰もいないときこそ、それは美しいかもしれません」

共感です。。誰もいない空間には美しさがある。。人のいない部屋には光と影、温度の違いなど、微々たる変化に目を奪われることがあります。

北欧のフェルメールと呼ばれるデンマーク画家。。窓から射し込む光の仄かな温かさも良かった。。素晴らしかった。

 

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北欧画家たちが切り取った何気ない妻たちの日常や静謐な風景を鑑賞して、思っていた以上に疲れている自分と対面した。。心配される事や不安が多い中、身体と同じくらい心のケアも必要です。

 

『私に似ていない彼女』 加藤 千恵

 

私に似ていない彼女

私に似ていない彼女

  • 作者:加藤 千恵
  • 出版社/メーカー: ポプラ社
  • 発売日: 2019/11/13
  • メディア: 単行本
 

おすすめ ★★★★☆

【内容紹介】

隣にいる人は、あなたの鏡。

決別した母と十数年ぶりに顔をあわせた娘、友情は永遠に続くと思っていたあたしたち、仲が良いわけではなかった昔の同僚、憧れで大好きな叔母、見えない鎖に縛られた姉妹--。近すぎるから疎ましい。近づきたくてもどかしい。見て見ぬふりをして、傷つかないふりをして、心の片隅に押し込めていた感情が溢れ出す、様々な「女二人」の繊細な距離感を鋭く切り取った傑作短編集。

【感想】

女友達、元同僚、母娘、姉妹、伯母と姪、妻と元カノ。。様々な「女二人」の繊細な距離感描いた全8話の短編集。

 

友達の話す感情をただ知りたかった。共有したいが為に友達の彼氏とキスをするという突飛な行動。大好きな気持ちの距離感が不器用な10代(「滅亡しない日」)。。得体の知れない姉の領域に踏み込めない妹のスレスレな関係。ある過ちを犯してしまう妹に対して姉の「切れる?」って一言が...めちゃ怖い(「切れなかったもの」)。。台湾茶専門店を営む主人公のお店に元同僚が訪問。お店のダメ出し、経営方針など的確なアドバイスを受ける。とてもデキた元同僚に驚愕の秘密が。お茶を飲んでほっこりしてるラストだったけど、実際にあったら心のざわつきが収まらないよ(「お茶の時間」)。。唯一男性目線の物語は正直に生きる女性と出会い、惹かれ、何でも受け入れるカノジョに物足りなさを感じ、別れることに。正直な妻に振り回される結婚生活。元カノと別れなければ...と妄想に耽る男性の悲哀が感じられる(「正直な彼女」)。。確執母娘。祖母の葬儀の為に実家に帰る娘。許せなかった母の意外な言葉。母娘の話は母でも、娘でもあるわたしには苦い話です(「皺のついたスカート」)

 

異性や結婚が女性の距離感を微妙にさせるようなお話が多かった。帯に「人生に本当に必要なのは、気が合わない人だ!共感ごっこに辟易した人に読んでほしい」と小説家・山本文緒さんのコメントが書いてあります。女性は共感して距離感を縮めていくけど、ズレが生じた時にどう距離感を保っていくか...。女の友情は若い頃の真っ直ぐな気持ちと違って、歳を重ねると時には疲れてしまい、気持ちを留め、踏み込み方が難しくなる。特に家族間だと近すぎて、色々と見失う時がある。。その絶妙さが上手に描かれてました。面白い作家さんと出会えた。

『流浪の月』 凪良 ゆう

 

流浪の月

流浪の月

  • 作者:凪良 ゆう
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2019/08/29
  • メディア: 単行本
 

おすすめ ★★★★☆

【内容紹介】

あなたと共にいることを、世界中の誰もが反対し、批判するはずだ。わたしを心配するからこそ、誰もがわたしの話に耳を傾けないだろう。それでも文、わたしはあなたのそばにいたい―。再会すべきではなかったかもしれない男女がもう一度出会ったとき、運命は周囲の人を巻き込みながら疾走を始める。新しい人間関係への旅立ちを描き、実力派作家が遺憾なく本領を発揮した、息をのむ傑作小説。

 

【感想】

深刻な問題がたくさんあり過ぎて疲弊をした。

誘拐事件の加害者と被害者。世間の事実と当事者の真実。ネットの煽り、思い込みの狂気、暴力、依存。。母親の影響力。。全てを心の闇と突き放してよいのかどうか。。言いたい放題の他人の無責任な正義感と好奇心の悪意が満ち溢れ過ぎて...ヘビー級のパンチを喰らわされた気分。誹謗中傷をする事はないにしても「少女誘拐事件の加害者」というだけで嫌悪感はわたしにもあると思う。被害者の心の傷を勝手に想像して同情する事もある。心中ザワザワが止まらず、大きく打ちのめされた。。

本屋大賞ノミネート作品の中で興味のあった作品でした。とてもパワーのいる読書だったけど、読んで良かった。。

ネタバレします。

9歳の更紗。父が亡くなり、母に置き去りにされ、伯母夫婦の家で暮らすが、心の傷を負い、居場所を失う。公園で出会った小児愛好者と噂される大学生・佐伯文に「うちにくる?」と言われ、共同生活が始まる。文の優しさと解放感で幸せな時間を送るが文の逮捕で同居生活は終わる。

24歳の更紗。「家内更紗誘拐事件」で世間に性犯罪被害者(被害を受けてはいない)として同情される事に疑問を拭い切れない。文との思わぬ再会から過去の事件と文に強く意識しだす。一方、同棲相手・亮のDV、ストーカー行為が過激化し...誘拐事件が再び世間に露見していく。

19歳の文と34歳の文。経営者の父。教育熱心な母。優秀な兄。理想的?な家庭で育つ文には誰にも言えない身体の苦悩を抱える。それが後の事件につながる。幼い更紗の苦痛と自分を重ね合わせた文の救いたい気持ち。居場所を埋め合わせる2人のささやかな幸せのひととき。連れ去りは犯罪であり、許される行為ではないのだけど、温かい目で見守ってしまう。規律の中で生きてきた少年が年を重ねるごとに心の傷を深める。。そんな文にとって更紗の自由さは輝いて、希望に近いのだろう。どこにいっても世間の目は変わらず付き纏うだろうけど、2人が繋がる事で乗り越えていけるのなら、そっと心穏やかに過ごせることを願いたい。

『むかしむかしあるところに、死体がありました。』青柳 碧人

 

むかしむかしあるところに、死体がありました。

むかしむかしあるところに、死体がありました。

  • 作者:青柳 碧人
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2019/04/17
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

おすすめ ★★★☆☆

【内容紹介】

鬼退治。桃太郎って…えっ、そうなの?大きくなあれ。一寸法師が…ヤバすぎる!ここ掘れワンワン埋まっているのは…ええ!?昔ばなし×ミステリ。読めば必ず誰かに話したくなる、驚き連続の作品集!

【感想】

隙間読みにはちょうど良いと思う。

「一寸法師の不在証明」打ち出の小槌の使用法を改めて知った。悪すぎる一寸法師..笑。

「花咲か死者伝言」金銀財産の褒美を巡る欲望..笑。

「つるの倒叙返し」サスペンス劇場..笑。

「密室竜宮城」一番面白かった。竜宮城の見取り図付き。密室事件を解決する探偵・浦島太郎。美男子海牛を巡る女の闘い。。時間差トリック。。優雅で夢のような世界でも、絡み合う魚模様は複雑。

「絶海の鬼ヶ島」これも面白い。鬼ヶ島の過去に起きた大惨事・恐怖の殺人鬼桃太郎伝説。時を経て、平和な鬼ヶ島で起きる謎の連続殺鬼事件。。疑心暗鬼な鬼たち。。誰の仕業?

 

とってもライトなミステリー。楽しい話ではあったけど、途中で退屈になってしまった。浦島太郎で盛り上がったけど、全体的には合わなかったかなぁ。