みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『ホテルローヤル』 桜木 紫乃

 

ホテルローヤル (集英社文庫)

ホテルローヤル (集英社文庫)

 

おすすめ ★★★☆☆

 

【内容紹介】

北国の湿原を背にするラブホテル。生活に諦念や倦怠を感じる男と女は“非日常”を求めてその扉を開く―。恋人から投稿ヌード写真の撮影に誘われた女性事務員。貧乏寺の維持のために檀家たちと肌を重ねる住職の妻。アダルト玩具会社の社員とホテル経営者の娘。ささやかな昴揚の後、彼らは安らぎと寂しさを手に、部屋を出て行く。人生の一瞬の煌めきを鮮やかに描く全7編。

 

【感想】

釧路の湿原を見下ろす高台にあるラブホテル「ホテルローヤル」が舞台となる7つの連作短編集。

 

話は廃墟から始まり、ホテル開業まで、時の流れが遡っていく。。湿っぽさを感じる廃墟の一室から漂う空気を引きずるような男女の繋がり。。虚しさ。。ラストの開業を夢見る欲望のむき出しが更に虚しさを深める。。桜木さんらしい後ろ暗さを感じるが、いつもの北海道の厳しさがあまりなく、淡々としたお話の流れでした。。

 

一番良かったのは「星を見ていた」
ホテル清掃従業員のミコ。10歳年下の夫と二人暮らし。3人の子供とは音信不通。必死に生きてきたミコは人のことを考える余裕がない。。そこに次男から手紙とお金が届く。。小さな喜びから、一転する出来事が。。ミコの見つめる星。。

 

日常にささやかな夢を求めたくて、非日常の世界に逃げ込みたくなるのかもしれない。。

『日日是好日』

 

映画『日日是好日』(にちにちこれこうじつ)公式サイト 2018年10月13日公開。

おすすめ ★★★★★

 

原作を読んでから映画はあまり観ないのですが、こちらは映画が観たいから、先に原作を読みました。。映画もいい。。本もいい。。振り返ると、、ずっと泣いてた。。

 

樹木希林さんが出てきて、まず泣いた。なんて凛とした姿なのだろう。。お茶のお稽古にクスッと笑った。。「お茶って変」。。お茶菓子の可愛らしさにほっこりした。。お作法、所作、心の変化に背筋が伸びた。。季節の音、風景に静けさが広がり、スーッとした気持ちになった。。一期一会。。いつ何時、一生に一度だと思う気持ちで迎える。。静かに泣けた。。最後まで、静々と泣けた。。(最近、涙もろいなぁ。。昨日はおじぃに泣かされたのに、今日も泣いてる。。)

 

日日是好日。。毎年同じ事ができる幸せ。。FBが知らせてくれる去年の今日。。おんなじ事してるなぁって思ってたけど、、幸せなんだぁ。。良かった。最近、溜まりに溜まってるので、浄化作業の日々です。。うん。。今、観て良かった。。🍵

『ライオンの冬』 沢木 冬吾

 

ライオンの冬     (角川文庫)

ライオンの冬     (角川文庫)

 

おすすめ ★★★★★

【内容紹介】

伊沢吾郎、82歳。かつて日本陸軍の狙撃手としてフィリピン戦線で戦った男は、軍人恩給をもらいながら、孫娘の結と山奥でひっそり暮らしていた。しかし、ひとりの少年の失踪事件をきっかけに、雪山は緊迫感に包まれる。伊沢の動向を監視する謎の男たち。複雑に絡み合う思惑…。囚われた過去を背負いながら、老兵は愛する人を守るため、再び立ち上がった。。

 

【感想】

おじぃたち。。泣ける。。

2人の「山じじぃ」。。狙撃手の吾郎さんと罠を武器とする猫田虎之介さん。。この2人に可愛がられる孫娘・結のあどけなさ。。序盤の狩り生活や山奥(髭之先と呼ばれる山)での暮らしが素朴で幸せな光景(モンハン好きで特にガンナー愛好家のわたしにはとても楽しい場面)。。事件とは無縁な老人たちに忍び寄る怪しい男たち。。突如一変する銃撃戦。。雪山での戦いが緊迫度MAX。。若造たちが自分たちの山で好き勝手は許さん的怒りに奮闘する老兵たちの壮絶な戦い(国家的な陰謀はあるのですが)。。相手の裏をかく吾郎兵の戦略。思いもかけない罠を仕掛ける猫爺。。かっこいい。。戦場を生き抜いた老兵たちがクソガキ(猫爺さんの御言葉を借りて)にやられるわけがないと応援しながら読む。。(でも年には勝てない。。悔しい)

結の懸命さや健気なポチっこ(吾郎さんの愛犬)にも心打たれる。。この2人の最期の場面は、、ただただ号泣でした。

 

実は武器の種類、威力や敵味方がよくわからない時もありましたが、、守るべき物への男のプライドと執念。。今年一番の感動が押し寄せてます。。

『天国まで百マイル』 浅田 次郎

 

天国までの百マイル (朝日文庫)

天国までの百マイル (朝日文庫)

 

おすすめ ★★★★☆

 

【感想】

会社の倒産により妻に離婚され、財産も妻子も失う城所安男。妻子への養育費の支払いもままならず、水商売の女性・マリに養ってもらう生活。。子供4人を女手一つで育てた安男の母。。母が重い心臓病を患い、母の命を救うため、天才的な心臓外科医がいるという病院めざし、百マイルをひたすら駆ける。

どん底に堕ちた安男を支える女性たち。
母が子に想う気持ち、子どもの生活を守りたい元妻の気持ち、愛する男の幸せを誰よりも願うマリの気持ち。。どの女性の心情もわかり、感情移入してしまう。。特に母親の「子供に負けてもらいたくない。」このまっすぐな想い。。出来の良い兄たちと姉への劣等を抱えてる末っ子。。母を救う事で自分も救われたい安男。。その願いを叶えさせたい母親。。安男は幸せね。女性たちのために再起するしかない。。

『向田邦子の青春』 向田 和子

 

向田邦子の青春―写真とエッセイで綴る姉の素顔 (文春文庫)

向田邦子の青春―写真とエッセイで綴る姉の素顔 (文春文庫)

 

おすすめ ★★★★☆

 

【感想】

向田邦子さんの妹・和子さんが写真とエッセイで綴る姉の素顔。
向田邦子さんの人柄、ファッション、仕事、遊び、生き方が煌めいて、かっこいい。。「自分を大切にする」事への情熱が伺える。。好奇心旺盛で好きな事へは徹底的に極める。。相手への思いやり、見守る姿勢、欠点も愛すべきところなど、、見習うべき点が多々ある。。人も物も「好きと嫌い」を見極めてるところも好き。。妹や家族といる向田邦子さんの素顔は責任感が強い長女でもあり、おっちょこちょいな一面も見え父を激怒させる笑、、とても素敵な女性。
9歳上の姉への尊敬、影響力、憧れという気持ちが手に取るようにわかる。わたしも向田邦子さんの大ファンなので、彼女の言葉の影響力がわたしの生き方にも反映している。なかなか難しいけど、、指針にはなる。。

彼女のエッセイは何度も読み返してます。。人間観察、客観視に長け、日常、友人たちとの交流、家族の話をユーモアを交え、感性豊かに、鋭くて、とても優しく温かい。。

和子さんの本を読んで、家族に向ける向田さんの言葉、本音を知り、お気に入りのエッセイをいくつか読み返す。。この本のおかげで、また違う感じ方ができた😌うれしい。

 

わたしのお気に入りのひとつを和子さんもあげていました↓

『夜中の薔薇』「手袋をさがす」
22歳の時、気に入った手袋が見つからず、ひと冬、手袋なしで過ごした向田さん。。46歳の時にあの頃の自分の事を書いている。

「自分の気性から考えて、あのとき、二十二歳のあの晩、かりそめに妥協していたら、やはりその私は自分の生き方に不平不満をもったのではないか。
いまの私にも不満はあります。年と共に、用心深くずるくなっている自分への腹立ち。
心ははやっても体のついてゆかない苛立ち。音楽も学びたい、語学もおぼえたい、とお題目をとなえながら、地道な努力をしない怠けものの自分に対する軽蔑。そして貧しい才能のひけ目。
でもたったひとつ私の財産といえるのは、いまだに「手袋をさがしている」ということなのです。」

「手袋」を探し続けて、手に入れても、まだまだ満たされず、また探し始める。。向田さんの人生。
改めて、早すぎる死が悔やまれます。。

『破天荒フェニックス』 田中 修治

 

破天荒フェニックス オンデーズ再生物語  (NewsPicks Book)

破天荒フェニックス オンデーズ再生物語 (NewsPicks Book)

 

おすすめ ★★★☆☆(星3.5くらい)

メガネ業界で世界一を目指す!
「絶対に倒産する」と言われていた破産寸前の会社・オンデーズを買収し、再生までの実話を元にしたビジネス小説。
メガネ愛用家として、気になるOWNDAYS👓。。なんとなく読んでみたら、意外に面白かった。。あまり期待をしていなかったので。。楽しめたのかも。。

 

破れたデニムにスニーカー、ロン毛で茶髪の30歳「遊び人風」のチャラい若造スタイルの新社長・田中修治。
楽天主義の社長を支える慎重かつ冷静な財務担当・奥野良孝。

本部役員たちの絶望、落胆、失望の空気が混じる社長就任の日から波乱の日々が始まる。。(新社長就任の挨拶でロン毛茶髪、破れたデニムで登場するのも、、なかなかすごい)
苦しい資金繰り...新事業失敗...新たな資金作り...資金ショート...資金集め...新事業...。困難と失敗の連続。。大変。
メガネの価格破壊。デザイン、カテゴライズ、クオリティ、ブランド化、海外進出と、根本から変える大胆な経営戦略から資金繰りのリアリティ。。奥野良孝さんの苦悩に一緒になってキリキリしてしまう。
田中修治さんの行動力と運の強さ。「火は爆弾で吹き飛ばす」という破天荒な発想。。その全てを支えてくれる仲間たちに恵まれていることが彼の人柄に繋がるのではないだろうか。。震災でのエピソードや仲間との別れなど、泣かせる場面もあり。ライトな池井戸小説といった感じでした。

『和菓子のアン』 坂木 司

 

和菓子のアン (光文社文庫)

和菓子のアン (光文社文庫)

 

おすすめ ★★★★☆

 

【内容紹介】

デパ地下の和菓子店「みつ屋」で働き始めた梅本杏子(通称アンちゃん)は、ちょっぴり(?)太めの十八歳。プロフェッショナルだけど個性的すぎる店長や同僚に囲まれる日々の中、歴史と遊び心に満ちた和菓子の奥深い魅力に目覚めていく。謎めいたお客さんたちの言動に秘められた意外な真相とは?読めば思わず和菓子屋さんに走りたくなる、美味しいお仕事ミステリー。

 

【感想】

季節の移ろい、文学の楽しみを味わえる上生菓子。。和菓子の隠語、姿形も含めて全て意味、物語が詰まっていて、とても奥深く、味も想像を掻き立てられ、読んでると甘味ほしくなるなぁ。。これはなかなか危険。。笑。。。デパ地下で繰り広げられる慌ただしい充実感、和菓子とお客様を繋ぐ甘いけどほろ苦いエピソードや謎解き。。

学生の頃、バイトをしていた和菓子カフェを思い出しました。。アンちゃんほど熱心に勉強しなかったけど、、お客様に聞かれる和菓子の質問(年配のお客様から、試されることしばしば)にちゃんとお答えできるように苦手な暗記をがんばったり、お作法を教わったり、、叱られる事も多々あったけど、楽しい思い出。。

ちょっとふくよかで大福のような可愛らしいアンちゃんと個性高めな仲間たち。。繊細な和菓子のように、相手の気持ちのその先も感じ取れる素敵な登場人物たちに、、心満たされる一冊でした。。🍡