みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『エデン』 近藤 史恵

 

エデン (新潮文庫)

エデン (新潮文庫)

 

おすすめ ★★★★☆

 

【内容紹介】

あれから三年―。白石誓は唯一の日本人選手として世界最高峰の舞台、ツール・ド・フランスに挑む。しかし、スポンサー獲得をめぐる駆け引きで監督と対立。競合チームの若きエースにまつわる黒い噂には動揺を隠せない。そして、友情が新たな惨劇を招く…。目指すゴールは「楽園」なのか?前作『サクリファイス』を上回る興奮と感動、熱い想いが疾走する3000kmの人間ドラマ。

 

【感想】

サイクルロードレースの世界最高峰・ツール・ド・フランスに挑む白石誓(チカ)
憧れの舞台で言葉の壁、監督との確執、不穏な疑惑騒動、友情の亀裂。。波乱の中、過酷なレースを走り続ける。

平坦、海沿い、山岳。どのコースも天候、風や空気抵抗、運などに左右されるレース展開。。気を抜けば落車。。緻密な計算と戦略、チームワーク、体力温存、時間の駆け引き。。圧倒される。
山岳でのライバルエースとの攻防に心高まる。。葛藤。。決断。。羨望と嫉妬が心地よく入り混じる清々しさ。。「選手たちはライバルでもあるが、一緒に走りきる仲間」。。謙虚で生真面目なチカの競技にかける熱い想い。。チカ、かっこいい。
読んでるだけなのに、駆け抜けた気持ちになり、またまた満足🚵🏻‍♂️💨

『サクリファイス』 近藤 史恵

 

サクリファイス (新潮文庫)

サクリファイス (新潮文庫)

 

おすすめ ★★★★☆

 

【内容紹介】

ぼくに与えられた使命、それは勝利のためにエースに尽くすこと―。陸上選手から自転車競技に転じた白石誓は、プロのロードレースチームに所属し、各地を転戦していた。そしてヨーロッパ遠征中、悲劇に遭遇する。アシストとしてのプライド、ライバルたちとの駆け引き。かつての恋人との再会、胸に刻印された死。青春小説とサスペンスが奇跡的な融合を遂げた!大藪春彦賞受賞作。

 

【感想】

ミステリー要素もハラハラしたけど、なんと言ってもサイクルロードレースという団体競技の複雑さと個々のプロ意識とプレッシャー。レースの迫力、臨場感、爽快感。。
「勝利のためにエースに尽くす」アシスト達の夢や嫉妬を喰らい、踏みつけ、ゴールゲートに飛び込むエース。。自分の勝利を求めず、エースアシストに徹底する世界。。凄い。。面白い。。感動。。近々クロスバイクを購入し、駆け抜けようと思ってたわたしにはすごく刺激のある本でした。。🚴‍♀️💨(ロードバイクは怖い)
次は『エデン』。。世界の舞台へ。。楽しみ😊📖🎶

 

 

『日日是好日』 森下 典子

 

日日是好日―「お茶」が教えてくれた15のしあわせ (新潮文庫)

日日是好日―「お茶」が教えてくれた15のしあわせ (新潮文庫)

 

おすすめ ★★★★★

 

【内容紹介】

お茶を習い始めて二十五年。就職につまずき、いつも不安で自分の居場所を探し続けた日々。失恋、父の死という悲しみのなかで、気がつけば、そばに「お茶」があった。がんじがらめの決まりごとの向こうに、やがて見えてきた自由。「ここにいるだけでよい」という心の安息。雨が匂う、雨の一粒一粒が聴こえる…季節を五感で味わう歓びとともに、「いま、生きている!」その感動を鮮やかに綴る。

 

【感想】
お茶の時間の、のんびりとした隙間時間を埋めてくれた本。
季節の移ろいを五感で味わうこと。頑張らなくちゃダメという自分の無価値の不安への和らぎ。一期一会とは。。
一日を丁寧に生きることの大切さと瞬間の気づきと学び。。茶道を通して生き方を教えてくれた先生との出会い。

 

映画の公開前に読みたくて、手にした本。登場人物も俳優さんの顔を思い描きながら、読んでました。
脳内では先生のお言葉が樹木希林さんから放たれるので、とても心弾む読書でした。ひとつひとつが心に沁み渡り、温まる中、希林さんの訃報を知り、、とても寂しい気持ちが広がりました。先生が更に希林さんに重なり、、心がじんわり、時折ズキズキと遅読になっていく。

 

ようやく読み終わり、
悪い日なんてないんだぁ。。「日日是好日
毎日、素敵な瞬間に気づいていきたい。そう思えるエッセイ本でした。

『獣の奏者Ⅳ 完結編』上橋 菜穂子

 

獣の奏者 4完結編 (講談社文庫)

獣の奏者 4完結編 (講談社文庫)

 

おすすめ ★★★★★

 

【内容紹介】

闘蛇と王獣。秘められた多くの謎をみずからの手で解き明かす決心をしたエリンは、拒み続けてきた真王の命に従って王獣を増やし、一大部隊を築き上げる。過去の封印をひとつひとつ壊し、やがて闘蛇が地を覆い王獣が天に舞う時、伝説の大災厄は再びもたらされるのか。傑作大河物語巨編、大いなる結末へ。

 

【感想】

エリンの子・ジェシも母親譲りの好奇心と探求心で母と同じ道を辿る。子育てに奮闘しながら、真王の命で王獣の部隊育成の挑戦をし続けるエリン。戦で親を失う恐怖、不安、怒りにかられるジェシ。。緊張感で張り詰めた空気から一気に解き放たれたラスト。。涙が止まらず。。全ての真実を目に焼き付けたエリンの思い。自然と人間の共存、戦の教訓、親子の絆がとても現実的に描かれ、強い共鳴を受けました。人間も王獣も群れて生きるからこそ、次の世代のために命をかけて守る者たちの希望と恐怖を生き抜く壮大な命を繋ぐ物語でした。

あとがきでこの作品にかける作者や関係者の方々の熱い思いにまた涙が溢れる。。素晴らしい。
読書をする時間と気力が持てなかったけど、良い刺激になりました。読書欲アップ😊📖⤴️🎶

『獣の奏者Ⅲ 探求編』上橋 菜穂子

 

獣の奏者 3探求編 (講談社文庫)

獣の奏者 3探求編 (講談社文庫)

 

おすすめ ★★★★★

【内容紹介】

愛する者と結ばれ、母となったエリン。ある村で起きた闘蛇の大量死の原因究明を命じられ、行き当たったのは、かつて母を死に追いやった禁忌の真相だった。夫と息子との未来のため、多くの命を救うため、エリンは歴史に秘められた真実を求めて、過去の大災厄を生き延びた人々が今も住むという遙かな谷を目指すが…。

 

【感想】

獣の奏者』闘蛇編、王獣編の続編です。
11年後。。母となったエリン。。闘蛇の突然死の謎を解明しながら旅をするエリンは再び様々な謎に行き当たる。亡き母の禁忌、王獣と闘蛇の戦の果ての災厄の真相、王国の新たな試練、家族の決断と未来について葛藤していく。。多くの謎を残す探求編からついに完結編へ。*1ワクワク

*1:o(´∀`)o

『風花病棟』 帚木 蓬生

 

風花病棟 (新潮文庫)

風花病棟 (新潮文庫)

 

おすすめ ★★★★★ 

 

【感想】

名医でもなく悪医でもなく「普通の良医」10人の医師。。高度な医療現場ではなく、身近にいる全く違う立場の医師が悩みながら真摯に患者に対して寄り添う温かい短編集。
どのお話にもほんのり登場するお花。花のようにそっと人生を彩り、豊かにしてくれる。。そんなお話ばかりです。

どのお話も感慨深いのですが、特に良かったのが、、
百日紅」父の死を機に帰省する息子。父と患者の思い出から見える医師としての父。。
「雨に濡れて」乳がんを患い、闘病しながら仕事をする女医。。
「終診」長年勤めた医師の引退までの数ヶ月。最後の日まで患者とかけがえのない時間を過ごす。。

作者自身が医師であり、大病を患う身となる。「患者と医師の垣根、生と死の境界線がどこまでも薄くなっていく時間」を経験したことが、人生の厚みを増していき、作品に表れているのだろうと、、あとがきからも感じられる一冊でした。

『不連続の世界』 恩田 陸

 

不連続の世界 (幻冬舎文庫)

不連続の世界 (幻冬舎文庫)

 

おすすめ ★★★☆☆

 

【感想】

『月の裏側』に出てくる塚崎多聞のトラベルミステリー。9年ぶりの再読。。内容はほぼ覚えてない。。ということで、新鮮で楽しめました。笑


「木守り男」(神田川

奇妙な夢を見続ける男の口から漏れた「コモリオトコ」この男が現れると日本に災いが起きる。「コモリオトコ」の正体は?

(コモリオトコ、、現れないでほしい💦奇妙な夢は恩田さんの実際に見た夢だそうです)


「悪魔を憐れむ歌」(奈良県花の寺コース)

不思議な魔力のボーカリストセイレン。彼女の「山の音」という歌を聴くと死ぬという噂を耳にする。その噂の真相は?

(山の音。。山鳴り。。山の静まり。。山との共鳴。。山に認められた男。。想像しただけで、恐怖。この話が一番怖かった😱)


「幻影キネマ」(広島県尾道市

故郷で映画の撮影現場を見ると周辺の誰かが死ぬと怯える男。過去の連続不審死との結びつきは?

(帰省した保の不安と恐怖の裏には昔観た映画の赤い犬の存在が。。赤い犬の正体は...。うぅぅ怖い)


砂丘ピクニック」(鳥取砂丘

フランスの科学者の最後の本に砂丘が目の前で消えたという不可解な出来事が記されていた。

(謎の上乗せ。。大きな謎に気を取られ、見過ごしてしまう小さな謎。。鳥取砂丘の美術館に行きたい。)


「夜明けのガスパール」(夜行列車内)

友人3人とお酒を飲みながら、朝まで怪談話するうちに...。

(多聞くんのトーヒコー。不連続な世界への旅。5話の中で異色なお話。今まで淡々と謎解きをしていた多聞くんの秘密が。。)


不思議で奇妙な話を耳にしてしまう多聞くん。。流れに身を任せ、巻き込まれていくうちに、長閑で静かな風景が恐怖で暗転していく。。ホラーな要素もあって、不気味なお話なのに飄々とした多聞くんに語られるとおとぎ話のよう。。

印象をあまり残さない通りすぎるだけの人間。。そばにいても空気のような多聞くんだからこそ、、その土地の穏やかな情景が目に浮かび、心地よく一緒に旅をした気分になっていきます。。(ほんのりホラーですけど)

 

また数年したら、、なんとなく忘れそうなお話なので、、その時も楽しみます。。😌📖🎶