みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『1ミリの後悔もない、はずがない』 一木 けい

 

1ミリの後悔もない、はずがない

1ミリの後悔もない、はずがない

 

 おすすめ ★★★★☆


【内容紹介】

「俺いま、すごくやましい気持ち……」わたしが好きになったのは、背が高く喉仏の美しい桐原。 あの日々があったから、そのあと人に言えないような絶望があっても、わたしは生きてこられた。ひりひりと肌を刺す恋の記憶。出口の見えない家族関係。人生の切実なひと筋の光を描く究極の恋愛小説。
第15回女による女のためのR-18文学賞読者賞受賞作。

 

【感想】

椎名林檎絶賛本なので、読んでみました🍎
全5編で構成されている連作短編集。
第一話の「西国疾走少女」は椎名林檎のバンド東京事変の『閃光少女』を聞きながら書いたそうです(作者は林檎ちゃんファンだそうで、デビュー作で帯を書いてもらって幸せだなぁ。。)

 

「西国疾走少女」
中学2年生になった由井はクラスメイトの桐原に恋をする。背が高く喉仏の美しい桐原。 家庭環境が複雑な由井の頭の中は桐原が全てだった。桐原以外の時間はひたすら駆け抜けていくだけ。周りはどうでもよかった。。まさに疾走少女ね。。

 

初恋で少女から一気に大人の女になる瞬間。。「なぜ惹かれるのか。色気としかいいようがない。」
未熟な心が本能で衝き上げられた感情のまま恋に走っていくのが、ドキッとする。。恋に落ちる理由のない異性への色気に惹かれる。そういう言葉には表せない恋の表現がとても本能的に描かれてると思います。
「大切なものをうしなう後悔」と「欲しかったものが得られなかった後悔」過去は変えられない。色々な後悔はある。後悔のない人生なんてないけど、、誰もが前に進んでるんです。時折、過去を引きずりながら。。

これからが楽しみな作家さんです。

『横浜駅SF 全国版』 柞刈 湯葉

 

横浜駅SF 全国版 (カドカワBOOKS)

横浜駅SF 全国版 (カドカワBOOKS)

 

 

おすすめ ★★★★★

 

横浜駅SF』のスピンオフ
【瀬戸内・京都編】キセル同盟(横浜駅の支配から解放される運動をする組織)立ち上げから崩壊までの話。
【群馬編】浅間山の噴火から人を避難させる医師と技術者の話。
【熊本編】
JR福岡宿舎で殺人事件発生。犯人は?なミステリー話。
【岩手編】
アンドロイド内で「天才」と呼ばれるアンドロイドの苦悩。

 

スピンオフが物凄く面白かった。。本編の謎が少しだけ、紐解かれていく。全ては解決されてないけど、本編に繋がると思うと面白い。
本書に書かれていた言葉を用いると
「普段使わない言語中枢の筋トレをしている気分」です。。すごく面白かった。。続きが読みたい。。

『横浜駅SF』 柞刈 湯葉

 

横浜駅SF (カドカワBOOKS)

横浜駅SF (カドカワBOOKS)

 

 

おすすめ ★★★★★

話を要約すると、、、
巨大な人工知能を持つJR統合知性体を導入した駅たち。。横浜駅だけ暴走してしまい、謎の伝染が発症(構造遺伝界)し、自己増殖をしてしまう。200年経ち、本州99%が横浜駅となる。エキナカ横浜駅内)と外の世界に分かれる。北海道と九州、四国はまだ侵略されず、JR北日本とJR福岡は侵略阻止の為に戦う。
三島ヒロト横浜駅外在住)はエキナカ追放者から18きっぷエキナカ期間限定切符)を手渡され、エキナカの旅を決意。旅の前に隣に住む謎の老人・教授から「42番出口に行け」と言われ、漠然と目指す。
旅の途中で出会う子供型アンドロイド(JR北日本が開発したエキナカ情報収集ロボット)やキセル同盟元リーダー・ケイハ(スイカネットのネットワーク情報の裏操作を行う技術者)との協力を得て、自動改札(エキナカを執り仕切るロボット)や駅員(警察的立場?)から逃れ、目的地に向かう。42番出口には何があるのかな?

【感想】
「構造遺伝界キャンセラー」「冬戦争」「ユキエさん」「スイカネットノード」など、解明困難なワードがたくさんあったのでメモしながら読んでたら、時間がかかりました。。しかも物語の最後に解説文が付いてた。。(゚ω゚)💦後ろ、要チェックね。。
エスカレーターが自然に生える」世界だからね。。理解しなくてもいんだけど、、気になっちゃって、立ち止まっちゃうの。

横浜駅は永遠に完成しない日本のサクラダ・ファミリアだ」って事からこんな話ができるなんて、、小説はすごい。

 

【ここからはメモ】

主人公・三島ヒロト...横浜駅外の九十九段下在住。キセル同盟という組織に所属するエキナカ横浜駅内)追放者(東山)から18きっぷ(5日間期間限定でエキナカに滞在できる)を手渡され、エキナカの旅を決意。旅の前に隣に住む謎の老人(教授と呼ばれている)から「42番出口に行け」と言われ、漠然と目指す。

ネップシャマイ...子供型アンドロイド。JR北日本が開発したエキナカ情報収集ロボット。エキナカ内の6歳以下Suica導入免除システムを利用する為に子供型。

二条ケイハ...キセル同盟リーダー。甲府在住。電化製品の修理請負業を営みながら、スイカネットへ介入し情報操作を行い自動改札の行動支配をする技術者)

久保トシル...九州への横浜駅侵略を阻止するJR福岡の技術部門の職員。武器を盗み出し、四国に逃げ込む事を企む

ハイクンテレケ...JR北日本のアンドロイド。特別仕様ボディ。走るのが速い。エキナカへの潜入工作員。主な任務は情報収集とスカイネットのノード獲得。


横浜駅増殖」自己増殖開始、本州ほぼ飲み込む。原因不明。
「構造遺伝界」コンクリートやプラスチックなど、固体物質に感染。大きい物質ほど維持されやすい。仕組みは謎。
「自動改札」エキナカを執り仕切るロボット。エキナカ内での暴力行為を行うと即追放など。人間に恐れられている。
「18キップ」期限付きSuica
Suika導入」6歳になる前にSuicaを導入しないと横浜駅から追い出される。お高い値段。
「キャンセラー」構造遺伝界を一時的に消す機械?
「冬戦争」西暦末期の国同士の戦争。
キセル同盟」構造遺伝界に対抗し、横浜駅の支配から解放される運動をする人々
「JR統合知性体」日本鉄道ネットワークの基礎。巨大人工知能
「ユキエさん」JR北日本技術部門最高責任者。。謎の人物?
「42番出口」ここには、何があるのかな?
「位置情報」スイカネットで記録されている個々の位置情報。Suica導入後からの履歴を見ることができる。

【気になるワード】
白富士山黒富士山
エスカレーターが生える
ことわざ「親がなくてもSuicaがあれば子は育つ」

『あとかた』 千早 茜

 

あとかた (新潮文庫)

あとかた (新潮文庫)

 

 おすすめ ★★★★★

【内容紹介】

実体がないような男との、演技めいた快楽。結婚を控え“変化”を恐れる私に、男が遺したもの(「ほむら」)。傷だらけの女友達が僕の家に住みついた。僕は他の男とは違う。彼女とは絶対に体の関係は持たない(「うろこ」)。死んだ男を近くに感じる。彼はどれほどの孤独に蝕まれていたのだろう。そして、わたしは(「ねいろ」)。昏い影の欠片が温かな光を放つ、島清恋愛文学賞受賞の恋愛連作短編集。

 

虚無感が漂って、、昏い闇に飲み込まれていきそうな連作短編集だった。。ε-(ーωー;)フゥ…

結婚前に演技めいた快楽で変化から逃れる女、乱暴に扱われる行為で寂しさを埋める女、傷つけられて愛を確認する女、罪に苦しみ、愛に自信を持てない女。。どの女性も自虐的で、かたちのない「かたち」を自分の中に遺し満たそうとする。。少なからず、理解を深める。。とても息苦しいのに、読むのが止まらなかった。。
「やけど」と「うろこ」の話が良かった。
「痛くても、辛くても、あたしは目に見える愛のかたちが欲しい」と身体に傷をつける藤森さんと不器用だけど受け止めようとする松本くんのお話。。いちばん読んでて辛かったけど、藤森さんの強さとどこかに彷徨って消えていきそうな存在感に、、惹き込まれてしまいました。。昏い闇なのに、美しい世界にも思えてしまい、引きずりこまれてしまう。。怖いなぁ。。

『対岸の彼女』 角田 光代

 

対岸の彼女 (文春文庫)

対岸の彼女 (文春文庫)

 

 おすすめ ★★★★☆

【感想】

専業主婦・小夜子と女社長・葵。葵の少女時代の親友・ナナコ。立場が違う女性の友情と亀裂の物語。
小夜子の章では育児、家庭、仕事に追われる日常を過ごしていくうちに葵の自由さに憧れ、友情を感じていく一方で価値観の違いから悲しみや落胆が募っていく、、とてもリアルな30代主婦が描かれていて、、懐かしさと心の痛みが同時に湧き上がってくる。。
葵の章では、少女時代に過ごしたナナコとの話。。葵の感情が小夜子と似てる。。無力な幼さがとても怖い。。
分かり合えそうで、なかなか分かり合えない女の友情。濃い時間を過ごせば過ごすほど、心のズレも大きく変わる。少女時代の狭い視野を埋め尽くす友情。30代の様々な環境の違いの中での儚い友情。。どの時代も人との関わりが心の影響を揺るがすものだと、この本を読んで痛感しました。。人に無防備になる瞬間があるなぁ。。そこで心深めたり、傷ついたり、諦めたり。。そういう微妙なズレがあるからこそ、お互い成長していくんだろうなぁと、、働く女性と子育てをする女性の友情のあり方に読後じんわりと温かくなるものを感じました。

スピンオフ『私の灯台』で大人になったあかり(小夜子の娘)の話の中で、ナナコらしき人物が登場するそうです。。読んでみたいなぁ。

『静かな爆弾』 吉田 修一

 

静かな爆弾 (中公文庫)

静かな爆弾 (中公文庫)

 

 おすすめ ★★★★☆

【内容紹介】

テレビ局に勤める早川俊平はある日公園で耳の不自由な女性と出会う。音のない世界で暮らす彼女に恋をする俊平だが。「君を守りたいなんて、傲慢なことを思っているわけでもない」「君の苦しみを理解できるとも思えない」「でも」「何もできないかもしれないけど」「そばにいてほしい」。静けさと恋しさとが心をゆさぶる傑作長編。

 

【感想】

8年ぶりに再読。

“言葉”という物が必要な時もあれば不必要な時もある。仕事で行き詰まる俊平は響子との筆談で語る静かな世界に癒しを感じる。仕事で帰国した俊平の前に突然消えた響子。失ってから気づく大切な存在。。何をどう伝えたら想いが届くのか。。

報道で務める俊平への同僚の言葉。
「子供って、誰かに伝えたいと思って、木に登るわけじゃないんだよ。木に登ったらどんな景色が見えるのか、ただ、それが知りたくて登るだけなんだよ。でもさ、年取ってくると、木に登らなくなる。万が一、登ったとしても、それを誰かに伝えたいって気持ちが先に立つ」
この言葉が響いたなぁ。

『小泉放談』 小泉 今日子

 

小泉放談 (宝島社文庫)

小泉放談 (宝島社文庫)

 

 おすすめ ★★★★☆


【感想】

50歳になったら後回しにしていたことを片付けようとしていた小泉さん。。2年経ってもうっすらとしか片付けられず、性根を叩き直そうと、「50代について」というテーマで、人生の先輩方の50歳の節目の迎え方をインタビューし、本音で語り合うエッセイ。。
お互いを尊敬し合ってるからこそ、赤裸々に悩みや苦悩を話せる関係性が羨ましい。。生きる力と抜け感のバランスがとても上手。。身体の変化、更年期の悩み、半世紀生きた自信と新たな挑戦、「やらない」の選択、。。など、職業が違う女性たちだけど、50歳という人生観や価値観は共感し、見習うべき点が多い。。

 

YOU...スルッとなっちゃった50歳。40になった方が抵抗があった。。「年の始まりが4って何だよ!」笑。

浜田真理子...やらされる事も大事な経験。やる気ってどうやったら伝わるんだろうと、、流されてきた。

江國香織...スローダウンはまだ早い。まだまだ渦中にいたい。

吉本ばなな...大人って、若い人にすごく無防備な姿を見せる。

中野明海...これからご褒美の時代に入るんだよ。

熊谷真実...ひとりの時間をきちんと経験すれば、あとはそれに楽しいことをプラスしていくだけ。

樹木希林...男であり女である者として、時々でいいから、自然なかたちて接触する機会を持つということを避けてほしくない。

浅田美代子...あとから来る人たちが歩きやすい道を作りたい。

平松洋子...10代20代の頃の、何も知らなかった頃に感じた衝撃を思い出したい。

上野千鶴子...若いって、無知で傲慢で見苦しいこと。だから「若い!」なんて、言われたくない。

美輪明宏...文化をたくさん食べて、それが身になっている人からは、光が滲み出て来る。

高橋恵子...「もう50だし」「60だから」というのは単なる思い込み。細胞は日々、新しくなってる。

槇村さとる...「私の感じ方」を手放さない。自分が何をどう感じるか、そのことを絶対に捨てない。

芳村真理...生き方もなんでも、自分というもの、新しいかたちをどんどん出していい。

渡辺えり...「自分から微笑もう」誰かにどうにかしてもらうのじゃなくて、自分からやる。

いくえみ綾...大人になるって「脱皮」ではなくふつうにひとつずつ歳をとっていけばそれなりに変わることはあるよ、という感じ。

増田令子...物欲がある時点でいい。何でもかんでも「いらない」と、人生、つまらない。

淀川美代子...何もなかった自分より、こうなってしまった自分のほうが、長くなっていく。その前の自分を大事にしなくちゃ。

甲田益也子...欠けていく自分を楽しむ。そういう種類のチャレンジ。

伊藤蘭...「死生観」が変わった。死を忌み嫌うのは亡くなった人に失礼。生きて、それを終えていくことを讃えたい。

片桐はいり...お母さん役。。わたしがやると、何か抽象画みたいになっちゃう。ピカソの絵みたいなお母さん。。(これはすごく笑った)

湯山令子...生理がなくなってからは、体調ブレない。もうずっと高め安定。超絶好調になるぞ!

中野翠...生き方としては、型にはまってるほうがラクですよね。最終的に、本人が気持ちよく暮らせるなら、どういうのもあり。

広田レオナ...ずっと自分が嫌い。「自分が嫌いな人間は不幸だ」って言うけど、そんなことない。私は不幸じゃないよ。

小池百合子...母はずっと味方だったけど、いちばん叱るのも母。(政治的な話は難しいけど、家族の今後を考えることは、50代は切実な問題なんだと思う)

 

キョンキョンが聞き上手。。勉強家。。
各著名人の言葉から見えるキョンキョンの人柄、感性、才能、私生活がカッコよくて、なぜか、、嬉しさがこみ上げる。。キョンキョンでも悩むんだ(あたりまえだけど)と安心感に浸ったり、、キョンキョンが「アハハハ」(そのまま表記されてる)って笑ってるタイミングと同じに笑ってる自分に、、喜びを感じたり。。アハハハ。。
ミーハーなわたしには、、ツボにハマるエッセイでした。