みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『短編復活』 

 

短編復活 (集英社文庫)

短編復活 (集英社文庫)

 

 「小説すばる」に掲載されてきた、膨大な数の短編小説を厳選してお届けするアンソロジー。
【目次】 回想電車(赤川次郎)
角筈にて(浅田次郎)
特別料理(綾辻行人)
蛍ぶくろ(伊集院静)
岩(北方謙三)
猫舐祭(椎名誠)
38階の黄泉の国(篠田節子)
プレーオフ(志水辰夫)
苦労判官大変記(清水義範)
梅試合(高橋克彦)
盛夏の毒(坂東真砂子)
超たぬき理論(東野圭吾)
さよなら、キリハラさん(宮部みゆき)
キャンパスの掟(群ようこ)
いるか療法―突発性難聴(山本文緒)
青の使者(唯川恵)

 

「特別料理」綾辻 行人
店の名は「YUI」高級特別料理。食材は入荷困難な物ですが究極のゲテモノを堪能できます。肉・魚・虫(いずれも珍味)をお好きな調理でいただけます。常連客にはスペシャルメニューという特典付き。スペシャルメニューのランクCはサナダムシ料理。ご希望により排泄物・吐瀉物も。。(この辺りでなぜ、こんなの読んでるんだろ?と疑問)。。ランクBは人肉。。(あぁぁ予想はしてたけど、、じゃぁランクAは。。。はぁ、、そうですか。。という読後でした。。

「超たぬき理論」東野圭吾
一平は子供の頃に空飛ぶたぬきを見る。たぬきへの研究を極め、UFOはたぬきであるという答えに行き着く。。
めちゃ面白かった。。こじつけもこじつけだけど、、実際の未確認飛行物体に関しての説もこじつけに近いものであるから「たぬき」でもいいと思うなぁ笑笑。。ラストのオチ!いや、、最初からのオチ!爆笑。。東野さんやっぱり面白いわぁ。。

「青の使者」唯川恵
愛人と飼っていた鯉の水槽に新たな青い鯉を放した途端に病気になり全滅してしまう。それを機に女は愛人との別れを決意し、貸したお金を取り戻すため、行方不明の愛人を探す。。
この本にふさわしいラスト。。怖い。。女の狂気。。女遊びは命がけでしてください。。

その他のお話も、、永遠の牢獄を彷徨う男女や美貌の妻への疑惑の毒にやられる夫や本物の源義経が弁慶で御大将義経が替え玉だったら?などなど、豪華な著者たちの短編集でした。。

『よるのふくらみ』 窪 美澄

 

よるのふくらみ(新潮文庫)

よるのふくらみ(新潮文庫)

 

 おすすめ ★★★☆☆

 

商店街に住む幼馴染の男女の複雑な恋愛話。

みひろの母は一度若い男と恋に落ち、家出をする(しばらくして戻り、、日常に溶け込む母)。。「おまえの母さん、いんらんおんな」と友達から言われ、商店街では同情の視線を浴びる。戻ってきた母を受け入れられないまま、大人になり、幼馴染の兄弟の兄・圭祐と婚約。いつからかセックスレスとなり、、結婚への不安と内なる欲望の爆発から弟(同級生)の裕太と関係を持つ。。卵子に突き動かされてしまったみひろの過ち。。それを引き金にみひろへの想いをずっと隠していた裕太の心が動き出す。。兄弟のぶつかり合う感情の間でみひろは女として母の行動、衝動を理解して行き、「結婚」というものを深く考え始める。。

読み続けて行くと、、東京から通天閣に舞台が変わり、、「ええとこ」で働いている女性の名前が「ミミ」(珍しく同名)。。ちと苦笑いしながら読む。。わたしが発したことない言葉を放つ「ミミ」(〃ω〃)。。ちと声に出してみた。。棒読み笑。。傷心した男の情けなく頼りない気持ちを慰める「ミミ」が登場すると気持ちが焦る。。恋の癒しは強烈な出会いかしら?

男女の切実なココロとカラダのお悩みを、真っ正面に受け止めました。。波乱万丈な恋愛話。。
うららかな時間☀️に刺激的なお話でした💕

"卵子のたくらみ"。。"ココロの中の饒舌なお口"。。印象に残る言葉が頭の中で繰り返される。。「よるのふくらみ」って言葉もなかなか。。

 

『#9』 原田 マハ

 

#9(ナンバーナイン) (宝島社文庫)

#9(ナンバーナイン) (宝島社文庫)

 

 おすすめ ★★★☆☆

 

内容(「BOOK」データベースより)

東京でインテリア・アートの販売員をするOL、真紅。仕事に挫折し、母親の待つ故郷に帰るべきではないかと悩んでいたある日。ふと立ち寄った宝石店で出会った見知らぬ中国人紳士に運命的な恋をする。真紅は「また会いたい」という一心で、紳士に渡された電話番号を頼りに上海に渡る。まるで見えない糸に導かれるように再会する二人。未来は、幸せなものかと思われたが―。上海を舞台に繰り広げられる大人の恋愛物語。

 

無名の画家の父を持つ深澤真紅。。釧路から上京し、フェイクギャラリーで勤める売上成績最下位の販売員。。モヤモヤした日々を過ごす真紅の前に現れたのが、中国人のやり手企業家・王剣。。瞬く間に恋してしまう真紅は会社を辞めて、、上海へ会いに行く(積極的、、その気があれば売上向上できたはず笑)。。あれよあれよと両想い💞。。王剣の美術コレクションの館でプリティウーマンのような日々を送る真紅。。彼氏のコレクションお披露目パーティーを成功させるために芸術審美眼を覚醒させ、コレクター蒐集力がめきめきと成長。。疲れた体を癒しにマッサージへ。。そこで運命の出会いが。。というお話。。...

なぜ王剣は冴えないOLに一目惚れをしたんだろう?とか王剣のやり手な恋愛?はあまり好ましくはないなぁなど。。恋愛に関しては飛ばして読みたくなったけど、、上海の熱気や中国の現代美術、古美術の描写やコレクター蒐集の裏事情などはさすがマハさんだなぁと思いました。。

『ビブリア古書堂の事件手帖〜栞子さんと奇妙な客人たち〜』 三上 延 

 

おすすめ ★★★★☆

 

内容(「BOOK」データベースより)

鎌倉の片隅でひっそりと営業をしている古本屋「ビブリア古書堂」。そこの店主は古本屋のイメージに合わない若くきれいな女性だ。残念なのは、初対面の人間とは口もきけない人見知り。接客業を営む者として心配になる女性だった。だが、古書の知識は並大低ではない。人に対してと真逆に、本には人一倍の情熱を燃やす彼女のもとには、いわくつきの古書が持ち込まれることも、彼女は古書にまつわる謎と秘密を、まるで見てきたかのように解き明かしていく。これは“古書と秘密”の物語。

 

人見知りの眼鏡美人店主栞子さん。。本の話になると、、人が変わったように生き生き入院中の彼女が古書を手にして訪れる客人の奇妙な謎を、、店員くんの状況説明と古書から解き明かしていく。。

知識、洞察力、頭の回転と、、巨◯がとても魅力的な栞子さん。。事件勃発しても、、どこかゆった〜りした展開。。。眼鏡なわたしは、、彼女が気になる。。

 

『罪の声』 塩田 武士

 

罪の声

罪の声

 

 おすすめ ★★★★☆

 

グリコ・森永事件で使用された子供の声の恐喝テープを元に描かれた小説。知らぬ間に巻き込まれたテープの主が大人になり、自分の罪の深さに苦しみながら過去の事件に向き合い家族の在り方を考えさせられるお話です。

 

曽根俊也は父の遺品から黒革のノートやカセットテープを見つけ、懐かしい幼い頃の自分のを聞く。。その内容が世を震撼させた「ギンガ萬堂事件」(グリコ森永事件)の恐喝で使われたテープだった。。俊也は知らぬ間に事件に関与してしまった悪感を抱き、父の過去を調べる。。

新聞記者の阿久津は年末企画の昭和・平成の未解決事件特集の担当となり、「ギン萬事件」の取材に取り掛かる。。事件の真相を追いかけていく内に、俊也に辿り着く。。点と点が繋がったとき、、事件の裏で一つの悲しい真実が。。

 

この小説の前に読んだノンフィクション『闇に消えた怪人 グリコ・森永事件の真相』ではキツネ目の男は目撃情報が浮上していてもその存在が明らかにされない。。近づけたと思うとスッと目の前で消えてしまう亡霊のような存在で、、小説のようなお話だと思った。。
』では、キツネ目の男が実在し、、確信に触れている気がするほどリアリティのある話だった。。

とても不思議な感覚だが、ノンフィクションを先に読んでいたおかげでとても読みやすく、あの事件の真相が明らかになる!という点で最後までワクワクしながら読めました。

幼いを大事件に巻き込ませる犯人たちの非情さや冷酷さが何よりもこの事件の闇の深さと恐怖を物語っている。。と動悸が止まらない読後でした。。

『闇に消えた怪人グリコ・森永事件の真相』 一橋 文哉 

 

闇に消えた怪人―グリコ・森永事件の真相 (新潮文庫)

闇に消えた怪人―グリコ・森永事件の真相 (新潮文庫)

 

 おすすめ ★★★☆☆

 

内容(「BOOK」データベースより)

平成12年2月13日、最終時効成立!江崎グリコ社長誘拐事件に端を発した、一連のグリコ・森永事件。発生から16年、ついに最後の時効がやってきた。捜査線上に浮かんでは消えていった、元警察官、韓国コネクション…、そしてキツネ目の男。「かい人21面相」の正体は?完全犯罪への道のりは?文庫化にあたり「時効に捧ぐ」を新たに収録。

 

「怪人21面相」江崎グリコ社長誘拐事件を発端に青酸混入事件、警察マスコミへの挑戦状の数々。。あらゆる証拠品、声明テープ、キツネ目の男の目撃情報など浮上する中、なぜ犯人は捕まらないのか?

劇場型犯罪と呼ばれた大手食品流通企業、消費者を脅かす謎の未解決事件。

グリコの対応(自社内で奮起するため周囲の対応策が遅れ、裏取引の疑惑浮上)に対し、森永の対応(国、マスコミの協力を要請。裏取引のないクリーンイメージを世論に訴える。)の違い。企業戦略の差が全く違うが、信頼回復の差がグリコの方が早いというのも興味深い。。

左翼系過激派、政治家、警察官、自衛官暴力団、企業社員、株の仕手筋、韓国の大物たちまで絡む複雑な繋がりと一言では言い表せない情報量が詰まった一冊。ただ最後が駆け足で終わってしまい、残念。。
それにしてもわたしの幼少時代に起きた小説のような事件。警察の捜査がことごとく失敗している中、公開された似顔絵の男F(fox)。。Fはどこに?ゲーム感覚のような脅迫文や挑戦状の記載されていた。どれもゾッとする。。この事件でたった一つの命が失われた悲劇が国民感情を怒りに変える(マスコミも大衆もそれまでは劇場のように楽しんでいる様子さえ見受けられる事も恐怖)

基本概要飲み込みました。。『罪の声』(この事件を元にした小説)を読んでみたいと思います。

 

『暗幕のゲルニカ』 原田 マハ

 

暗幕のゲルニカ

暗幕のゲルニカ

 

 おすすめ ★★★★☆

 

内容紹介

一枚の絵が、戦争を止める。私は信じる、絵画の力を。手に汗握るアートサスペンス! 反戦のシンボルにして2 0世紀を代表する絵画、ピカソの〈ゲルニカ〉。国連本部のロビーに飾られていたこの名画のタペストリーが、2003年のある日、突然姿を消した―― 誰が〈ゲルニカ〉を隠したのか? ベストセラー『楽園のカンヴァス』から4年。現代のニューヨーク、スペインと大戦前のパリが交錯する、知的スリルにあふれた長編小説。

 

MoMAのキュレーター・ヨーコ・ヤガミは10歳の時にピカソの「ゲルニカ」に心を奪われ、ピカソの研究を続ける。仕事も結婚生活も充実した日々を送る中、アメリカ同時多発テロで最愛の夫を失う悲劇に見舞われる。失意の中で報復を宣言するアメリカ。。記者会見場(国連本部ロビー)で目にしたのはロビーに飾られた暗幕をかけられた「ゲルニカ」のタペストリー。。誰が?なぜ?暗幕をかけたのか?

その暗幕のゲルニカの謎からニューヨークとスペインを舞台に駆け巡り、、ピカソと恋人ドラの過酷な歴史を紐解き、ヨーコの研究家として、アートの世界に魅入られた一人の人間として「ゲルニカ」という一枚の名画が放つ反戦への想い、絵の真意を負の連鎖を繰り返す世界に訴えるための戦いが始まる。

時を繋ぎながら、時代背景や心の描写を描き残せる名画たちの数々。その中でも「ゲルニカ」という名画から戦争の恐ろしさ、テロで失われた罪なき人の命、残された人の悲しみと怒り。。そこを描ける小説家の力も偉大だと思う。

ピカソへのドラの愛はマハさんが乗り移ったかのような、ものすごくリアルで情熱的で芸術そのものでした。